08年7月11日、金剛山(クムガンサン)観光地近くの浜辺で、北朝鮮の哨兵が韓国人観光客の朴ワンジャさんを射殺した。李明博(イ・ミョンバク)政府の発足後、南北関係が急激に冷え込む契機となった。当然、韓国政府は、真相究明と責任者の処罰、再発防止策を求めたが、北朝鮮は応じなかった。金剛山観光事業の中止は全面的に北朝鮮の責任だ。北朝鮮は盗人猛々しく、同年12月、開城(ケソン)観光まで中止に追い込んだ。1ドルが惜しい北朝鮮が、年間3000万ドルにのぼる金づるを逃すという自滅の手だった。そのいっぽうで、北朝鮮は李明博政府の「敵対視政策」に責任を転嫁した。
◆北朝鮮はここ2年余りの間、あらゆる詭弁を使って軍事的挑発や威嚇に明け暮れ、状況の反転を図った。昨年1月、人民軍総参謀部は、「北方限界線(NLL)を認めず、北朝鮮が設定した海上軍事境界線だけを認める」という声明を発表した。同月、祖国平和統一委員会は、盧泰愚(ノ・テウ)大統領の時に結んだ南北不可侵合意書の廃棄を宣言した。4月にはテポドン2号を発射し、5月には2回目の核実験を行った。その対応策として、韓国が大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に参加すると、北朝鮮は「もはや休戦協定の拘束を受けない。朝鮮半島は戦争状態に戻るだろう」と宣言した。
◆昨年10月にはNLL侵犯を再開し、「西海(ソヘ・黄海)で第3の衝突が起こる」と脅した。1ヵ月後には、実際に大青(テチョン)海戦を挑発した。12月には、NLL一帯を「平時海上射撃区域」に設定し、今年1月末、同海域で海岸砲を発射した。挑発の絶頂は3月26日の天安(チョンアン)艦沈没事件だ。北朝鮮は同事件で国連の制裁強化を招き、5ヵ月余りの間、中国に頼って持ちこたえたが、これも失敗すると、今度は離散家族再会のカードを取り出した。対米関係改善とドルや食糧の獲得を狙った多目的カードだ。
◆韓国をひとまずテーブルにつかせることに成功した北朝鮮は24日、2回目の接触で再び詭弁を並べ立てた。金剛山観光から再開しようというのだ。南北交流の中断原因である天安艦沈没事件と朴ワンジャ氏事件にこだわらないという態度だ。「一打三枚」を狙った術策だ。しかし、離散家族の再会は、2つの事件とは性格が全く異なる「人道的事案」だ。軍事的挑発事件はそれに混ざって曖昧にやり過ごせる性質のものではない。
李政勲(イ・ジョンフン)論説委員hoon@donga.com