北朝鮮が、金正恩(キム・ジョンウン)党中央軍事委副委員長の顔を公開し、「金氏王朝」の創業者である金日成(キム・イルソン)主席が復活したような政治的効果を出すために、長期間にわたって緻密な宣伝・扇動作戦を展開してきたとみえる。
●長期間企画してきた「金日成主席の再来」ドラマ
北朝鮮指導部はすでに昨年から、金正日(キム・ジョンイル)総書記の現地指導の写真などに金正恩氏の顔を巧妙に写していたことが1日、確認された。北朝鮮住民が先月30日に初めて公式に公開された正恩氏を見て、「前にどこかで見たようだ」という錯覚を持つように巧妙な「映像プレー」をしてきたのだ。
朝鮮中央テレビは、金総書記が昨年4月27日、元山(ウォンサン)農業大学に新築された温室を訪れた様子を放送し、金正哲(キム・ジョンチョル)、正恩、ヨジョンの3兄妹が、金己男(キム・ギナム)党宣伝扇動担当書記や張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長と撮った写真を放送した。写真に写った人物が誰なのか明らかにしなかったが、住民に正恩氏を無意識に認知させようとしたのだ。
このような作業とともに北朝鮮指導部は、正恩氏の顔立ちが金主席や金総書記に似ているという予告編性の宣伝をしてきた。昨年10月、日本の毎日新聞が入手・公開した「尊敬する金正恩大将同志の偉大性教養資料」の本文は、「尊敬する金正恩大将同志は、百戦百勝の鋼鉄の霊将であられる首領様と敬愛なる将軍様にそっくりでいらっしゃる先軍霊将」と強調した。
朝鮮中央テレビは、今年4月に「偉大な首領・金日成同志が、外国の首班や著名な人々と対面」、5月「祖国光復に向け」、7月「偉大な祖国解放戦争を勝利に導かれ」、9月「金日成主席と師匠サンウォル」や「偉大なる首領様、農業勤労者と共にいらっしゃる」など、金日成主席の生前の記録映画を放送した。
そして、今回、党代表者会という最大のイベントを舞台に、金日成主席にそっくりの正恩氏を披露した。特に北朝鮮は、金日成主席の若い頃ではなく、30代後半から40代後半の姿をモデルにして、正恩氏の容貌を似せたとみえる。これは、正恩氏の太った体型では、金日成主席の20、30代の姿を再現できないためだと推定される。金日成主席は、パルチザン活動をした20代と光復(解放)直後の30代初めの頃は、比較的やせた体型だったが、30代後半から急に太り始めた。金正日総書記も、74年に後継者になった後、父親の体格に似せるために故意に太ったという。
北朝鮮が9月上旬に開くと予告した党代表者会を下旬の28日に開催したのも、正恩氏の公開の効果を極大化しようという「戦略的時期調節」とみえる。お祭りムードを最大限に演出するために、8月中旬に新義州(シンウィジュ)と開城(ケソン)で起きた水害で住民の心が落ち着かない期間を避けたものと推測される。
●偶像化の立役者・金己男が再び出てくるか
後継者の広報のための緻密な宣伝・扇動作戦は、金己男書記の作品とみえる。金書記は、金日成総合大学と万景台(マンギョンデ)革命学院を出た金親子の最側近エリートで、40才の66年に党宣伝煽動部副部長を務めて以来、これまで金氏親子の偶像化と広報活動に努めてきた。
統一研究院の鉠敏(チョ・ミン)研究委員は、「金己男書記は宣伝扇動部長だった87年、有名な『口号の木』神話を作り出した人物で、金氏親子の偶像化のために歴史を歪曲した張本人」と説明した。北朝鮮は87年5月、白頭山(ペクトゥサン)密林地域を皮切りに、現在までに黄海道九月山(ファンヘド・クウォルサン)に達する地域で、「口号の木」が発見されたと宣伝している。この木には、金日成主席と夫人の金正淑(キム・ジョンスク)氏の抗日活動、金総書記の誕生を祝うスローガンが記されているというのが北朝鮮の主張だ。むろん、これは捏造されたものだ。
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