10日夜、済州(チェジュ)港周辺で156トン級の海軍高速艇「チャムスリ」295号が、漁船と衝突して沈没し、乗組員3人が死亡、または行方不明になった事故は、海軍の緩んだ綱紀を批判せざるを得ない。G20首脳会議開幕前日、全軍が最高レベルの軍事警戒体制に入っていた状態で起きた事故であり、なおさら情けないという反応が出ている。夜間に起きた事故とはいえ、可視距離が5.4キロもあり、見張り兵らは果たして何をしていたのか腹立つばかりだ。高性能という艦艇レイダーはなぜ、無用の長物になり、瞬時の緊急移動はなぜできなかったのか。
◆3月26日、哨戒艦「天安(チョナン)艦」沈没事件当時、北朝鮮の奇襲攻撃への対応には限界があっただろうと理解する一方、我が軍の様々な虚偽報告や警戒作戦のずさんさ、緩やかな綱紀に対し、憤った国民が多かった。そのため、国防部は、チョ・ウォンイル艦長などの指揮官4人を、軍刑法違反の容疑で立件したものの、最近、刑事処罰はしないことに決定した。国防部は、軍の士気や団結のため、起訴猶予の決定を下したという。チャムスリ295号の事故からみても、いつでも北朝鮮が挑発してきたら、しょっちゅうやられざるを得ないという不安を捨てきれない。
◆軍の綱紀が緩くなり、めちゃめちゃで戦闘力すらずさんな軍隊を、よく「唐の軍隊」にたとえる。天安艦沈没事件の際、陸軍参謀総長出身の李鎭三(イ・ジンサム)議員(自由先進党)は、我が軍の緩やかに綱紀を叱咤しながら、「このまま行けば、軍は昔の唐レベルになるだろう」と例えた。李舜臣(イ・スンシン)は、壬辰倭乱(文禄•慶長の役)当時、最悪の条件の中でも、崇高な護国精神や神出鬼没な戦術・戦略で、「23戦23勝」の不敗神話を成し遂げた。現在のような海軍なら、李舜臣の末裔だと名乗る資格が果たしてあるのだろうか。
◆李明博(イ・ミョンバク)大統領は5月4日、全軍の主要指揮官会議で、天安艦事件をきっかけに、軍はマンネリに落ちているのではないか、現実よりは理想に偏り、国防を扱ってきたのではないか反省し、気を引き締めるべきだと促した。金泰榮(キム・テヨン)国防長官は、「天安艦が沈没した3月26日を、『国軍の恥辱の日』と記憶するつもりだ」と、将兵の精神の引き締めを誓ったものの、高速艇が漁船と衝突し、沈没する大恥の出来事が起きた。多くの国民は軍を信じたいだろう。なのに軍は、このような国民を繰り返し、裏切っている。
権順澤(クォン・スンテク)論説委員 maypole@donga.com