発がん物質のホルムアルデヒドは可燃性の無色気体で殺菌剤や防腐剤に使われる。水に溶けるホルムアルデヒドが防腐剤のホルマリンである。環境部によると、国内でホルムアルデヒドの60%ほどはベニヤ板や家具製造に使われる。新築住宅に入居するとき鼻先を刺激する臭いが、他ならぬホルムアルデヒドから出るものだ。水に良く溶けて、他の物質と結合し易い特性があり、料理の模型を作るときに愛用されている。
◆「ホルムアルデヒド牛乳」事件が人騒がせのハプニングで終わった。国立獣医科学検疫院が毎日(メイル)乳業、ソウル牛乳、ナムヤン乳業、トンウォンデイリーフードの4社の牛乳4種と45の試料に対してホルムアルデヒド検査を行った結果、全ての製品でごく微量が検出されたが、自然的に存在し得る水準だった。毎日乳業の「アプソルートダブル(W)」にホルムアルデヒド飼料を食べさせた乳牛の牛乳が使われたという情報を提供したライバル会社の牛乳からもホルムアルデヒドが検出された。
◆他でもない乳児たちが飲む粉ミルクから基準値以上のホルムアルデヒドが検出されたことは、普通のことではない。食品の安全性は徹底的に管理されるべきだ。しかし食品に関連するでたらめな情報が氾濫すれば、製造会社と消費者の両方に被害が出る。狂牛病(BSE)怪談で大混乱を経験したのがわずか3年前のことだ。福島原子力発電所の事故で放射能への不安が広まっているが、自然界にも一定量の放射能は存在する。ホルムアルデヒドは日常的に摂取する果物、野菜、魚にも自然的に存在する。このような自然な形で存在する水準の物質が怖くて避けるのでは、世の中に食べれるものはない。
◆先端の測定器が登場してから、昔は検出されることもなかった微量の物質がppm(100万分の1)、ppb(10億分の1)、ppt(1兆分の1)単位にまで検出されるようになった。このようなごく微量の物質がマスコミを通じて知られると、市民たちは知らなくても良い情報まで知るようになり、不安も高まる。食品安全を担当する政府当局の態度も重要だ。昨年、ソウル市がタコの頭からカドミウムが検出されたと発表し、漁民とタコを扱う飲食店が被害を受けた。そのタコは中国産であることが、後日明らかになった。政府は、不良食品を徹底的に取り締まるべきだが、調査と発表の過程で消費者に不要な不安感を与えたり、善良な企業に被害が出るようなことは生じないようにしなければならない。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com