対ドルウォン相場が1ドル=46ウォンも上下した23日。外換(ウェファン)銀行のコ・ギュヨン先任ディーラーは、昼食すらまともに取ることができなかった。瞬く間に、為替相場が1ドル=10ウォンも値動きし、モニターから目を離すことができなかったためだ。実際、同日、ソウル外国為替市場は、政府と市場との激しい攻防の中、乱高下の典型的な形を示した。対外不安要因が浮き彫りになり、為替相場が1ドル=1200ウォン台までウォン安ドル高が進みそうな勢いを見せている。当局による市場介入を受け、急落する様子が繰り返され、外換銀行のディーリーイングルームのいたるところからは、「ひどすぎる」というため息が流れた。
●対ドルウォン相場の「乱高下」
取引開始前、為替市場の専門家らは、為替相場は1ドル=1200ウォン台までウォン安ドル高が進むと見込んだ。前日夜、域外差額決済先物為替(NDF)市場での対ドルウォン相はが一時、1ドル=1225ウォンンまでウォン安ドル高が進み、欧州や米証券市場は急落振りを見せ、安全資産であるドル高がさらに進むだろうと見込んだためだ。
為替当局は、取引開始前から忙しく動き回った。午前7時半、企画財政部(財政部)と韓国銀行は、マクロ政策協議会を開き、「最近の為替市場の偏りを受け、政府と中央銀行は為替当局として、これの緩和に必要な措置を講じることを決めた」と発表した。さらに財政部は、三星(サムスン)電子や現代(ヒョンデ)自動車など、国内輸出メーカーの関係者らを呼んで、市場安定への協力を要請した。輸出メーカー各社が稼いだドルを金庫にためておかず、ウォンに変え、ドル供給を増やしてほしいということだった。このような発表を受け、取引開始と共に、1ドル=1195ウォンまでウォン安ドル高が進んだ対ドルウォン相場は、1分後は1ドル=1150ウォンまでウォン高ドル安に転じた。
しかし、その効き目は長くは続かなかった。ドルを買おうとする輸入メーカー各社による決済需要が流入した上、域外でもドル買いが増え、再び急激なウォン安ドル高に転じた。証券市場でも、外国人投資家らによる売り越しを受け、ウォン安ドル高に拍車をかけた。為替相場は政府発表後、1時間足らずで再び1ドル=1190ウォン台までウォン安ドル高が進んだ。
その後、午前10時から1ドル=1190ウォン台前半や半ばでも売り買いの交錯が続き、取引後半に近づくと、1ドル=1196ウォンまでウォン安ドル高が進み、再び1ドル=1200ウォン台まで迫った。しかし、取引終了まで2、3分を残し、再び為替当局が大規模な介入に乗り出し、結局、1ドル=30ウォン程度ウォン高ドル安の1ドル=1166ウォンで取引を終えた。コ・ディーラーは、「最近は、為替当局が毎日、10億〜20億ドルずつで介入したが、今日は一際巨額を投入したようだ」と伝えた。
政府の市場介入により、ウォン高ドル安が進んだが、欧州財政危機など、対外悪材料が山積しており、ウォン安ドル高の傾向に歯止めがかかったのではないという見方が多い。域外ドル買いの勢いが強く、ウォン安ドル高に歯止めをかけるには力が足りず、当局による防御にも限界があるからだ。三星先物研究院のチョン・スンジ研究員は、「欧州財政危機などを受け、ドル買いの勢いが優位を占めている上、今のところ、先進国のみならず、発展途上国の景気減速の懸念も強い」とし、「1ドル=1270ウォンまでウォン安ドル高が進みかねない」と見込んだ。
●欧州系の脱コリア…外貨不足を巡る懸念も
最近の急激なウォン安ドル高を、外国人がドルを売って韓国を離れるシグナルと見ている見方が少なくない。先月、外国人が証券市場で4兆6000億ウォンを売り越したものの、債券市場では3兆8000億ウォン分を買い越したことを巡り、政府は、米国債の格下げにも関わらず、外国人が韓国市場から完全に足を洗うのではないという前向きなシグナルと分析したこともある。
しかし、今月に入り、欧州系を中心に、株や債券市場で同時多発的に資金を回収し、計6兆ウォン以上も流れ出した。グローバル的危機状況に備え、流動性を確保しようとする動きとも見ることができる。実際、ギリシャに巨額の資金を融資し、危機に追い込まれているフランス資本は、株や債権市場で一気に売りさばき、全体的な証券の売り越し額は計4400億ウォンにも達した。代表的な租税回避国であるルクセンブルクに本社を置く外国資本は、9月だけで計3200億ウォンを超える株を売りさばいた。短期間の投資差益を狙う「ホットマネー」は、市場がさらに不安になりかねないと見込んで、ひとまず、株を売り、現金化したのだ。
外国人が株や債券を売った代金をドルに変え、本国に送金する規模が増え、ウォン安ドル高がさらに進み、外貨保有高が不足しかねないという懸念も出ている。韓国の外貨保有高は、金融危機が始まった08年9月の2397億ドルから、先月末は3122億ドルへと大幅に増えた。にもかかわらず、一部からはドルが過度に早いテンポで流れ出すと、保有外貨総額とは関係なく、為替市場が不安になりかねないだけに、ドル流出の動向を、きめ細かくチェックすべきだという声が高まっている。
政府は最近、グローバル危機は08年の金融危機とは違って、慢性化する恐れがあることに注目している。金融当局の関係者は、「対外の悪材料はすでに知られている内容なのに、金融市場が動揺するのは、米国や欧州発危機は、短期間で解決されないことを示唆するものだ」と主張した。
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