最近、会った人々に対し、李ギオクさんの本、『私は自分の年が好きだ』を好んで勧めている。李光洙(イ・グァンす)の小説『土』の実際モデルだった農村啓蒙運動家、李鍾駿(イ・ジョンジュン)の長女、韓国アレルギー学会長を務めたカン・ソクヨン・ソウル大学医学部教授(死亡)の妻が、ほかならぬ彼女だ。「私は今、この瞬間の自分を、限りなく愛している。私の心の中にはまだ、思い出を楽しめる余裕があり、修能試験(日本のセンター試験に該当)の心配からも、子供らの就職からも少し離れたお年寄りならではの、のんびりした余裕がある」。60代に画家に、80代に随筆家とした登壇したこの女性が称えた彼女の年は88歳だ。
◆米ハーバード大学・医学部のジョージ・ベイラント教授は、老後も仕事を続け、愛することのできる秘訣を、7項目にまとめている。苦痛に立ち向かう成熟した防御機制、教育、安定した結婚生活、禁煙、禁酒、運動、適当な体重がそれだ。頷けることだが、行動に移すのは用意ではない。ベイラント教授は、「幸せで健康に年を取るのを決定付けるのは、優れた知的さや階級ではなく、人間関係だ」と指摘した。特に、47歳までに出来上がった人間関係は、防御機制を除くいかなる変数よりも成功的老化の重要な要因だと強調した。
◆小説家、故朴景利(バク・ギョンリ)先生の遺文詩集、『捨て去ることだけが残り、本当にすっきりしている』の中で、多くの試練や苦しみも、時が流れば美しい思い出だけが残るだろうと歌った。「苦しいときが過ぎ去り/ああ、気楽だ。年取ればこれほど気楽なことを/捨て去ることだけが残り、本当にすっきりしている」(昔のあの家)。一方、作家の故朴婉隺(バク・ワンソ)先生は、散文集、『行けなかった道が美しい』の中で、韓国戦争により挫けられた自分の夢見てきた道を大変残念がった。人生の末年は、見方によっては人生の完成でも、暮らしの衰えでもありうる。
◆キリスト教界に大きな影響を及ぼすビリー・グラハム(92)牧師の30冊目の著書、『ホームを目前にして:人生、暮らし、そして素敵な仕上げ』が発売前から米国で話題を呼んでいる。グラハム牧師の幼年期の夢だった野球選手に例えてのタイトルだ。氏は、「老年の寂しさや苦痛、精神的な友人を無くした悲しみについては、誰もがあなたのために準備してくれない」とアドバイスする。さらに、より一所懸命に祈り、人のために奉仕する情熱的な人生を生きることが、「美しい末年」のためには重要だと力説している。氏の助言は、老後には金に劣らぬほど、年取ることを認める心構えが必要なことを悟らせる。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com