会社員のA氏は昨年8月、所有するドイツ製乗用車、BMW750Liに乗り、カーブの激しい道を走っていたところ、車が雨に濡れている道路でスリップし、壁にぶつかり、車の前面部や下の一部が破損する事故に見舞われた。A氏は、車の修理のため、サービスセンターを訪れたが、予想をはるかに超える修理費に驚いた。部品価格と工賃費とを合計した修理費として、計4106万ウォンも請求されたのだ。A氏は、保険でこの車を修理した後、中古として処分した。
輸入車メーカー各社が、韓欧州(EU)間自由貿易協定(FTA)の締結を受け、価格を国産車と競争可能なレベルまで引き下げ、市場攻略に盛んに乗り出しているが、車の修理代は依然高いことが分かった。修理代が高い最大の原因は、部品価格が過度に高いためだ。一部の品目は、同級国産車との価格の差が、数十倍に達する。
●新車価格は引き下げ、部品は高く販売
7日、東亜(トンア)日報が、主要自動車メーカーや部品メーカー各社を通じて入手した主要国産・輸入車メーカーの事後処理(AS)取替え用部品価格のリストによると、ドイツ・メルセデスベンツの最高級車両であるSクラスの後ろガラスの供給価格は約238万ウォン。車体の大きさや排気量基準で、同級国産車である現代(ヒョンデ)自動車のエクウスの後ろガラスの価格(5万6000ウォン)の42倍を超える。
事故による損傷の多い前面ガラスの価格は約196万ウォン、前のバンパーは約112万ウォンに達した。二つの車種の新車価格の差を考慮しても、大きな差がある。
他の輸入車も同様だ。代表的な欧州製高級車ブランド、ベンツやBMW、アウディなどの部品価格は、国産の同級車種より平均4〜5倍ほど高い。輸入車業界では、部品価格が高いのは、「現地から純正部品を直接輸入する過程で、物流コストや関税流通費が加わり、部品コストが高いためだ」とし、「経済力のある消費者らは、これを十分考慮し、車を購入している」と主張した。
しかし、専門家らの意見は異なっている。輸入車メーカーは新車価格は引き下げながら、年間販売台数10万台、累積運行台数が60万台に上る輸入車の取替え用部品の価格を高めに策定して生じるマージンを、収益に当てているという。
与党ハンナラ党の権宅起(クォン・テッキ)議員が最近、保険開発院から提出を受けた報告書によると、輸入車の国内部品の供給価格は、海外現地より平均1.4〜2.4倍高いことが分かった。アウディA6のエアコン・ファンは、ドイツでは26万5000ウォン(11年9月、1ユーロ=1560ウォン基準)だが、韓国では64万3000ウォンだ。保険開発院の関係者は、「輸入車の部品が高いのは、不透明で独占的な流通構造のためだ」とし、「関税や流通費を加えても、過度な暴利を貪っている」と指摘した。
●保険料の負担が大きく、中古車価格が下落
高い部品価格は、修理費の増加だけでなく、保険料の負担へと繋がっている。保険開発院が国内保険会社11社に支給した修理費を分析したところによると、輸入車の修理費は国産車より平均5.4倍(09年基準)高かった。輸入車の販売が本格的に増え始めた昨年、保険会社が支給した輸入車修理費保険金は、前年比32%増の6000億ウォンに達している。修理人件費である工賃費は、国産車は1時間に2万1000〜2万4000ウォン、輸入車は4万2000〜6万3000ウォンだった。
輸入車は、事故の際、高い修理費のため、「痛みの種」になるケースが多く、中古車の相場は低い方だ。中古車業者であるSKエンカーのイム・ミンギョン・チーム長は、「大型輸入車の中古価格は、新車発売から3年後は50%以下へと下がる」と主張した。
輸入車の修理費が高いのは、国内公式ディーラーが部品価格を決定し、正式サービスセンターだけに、これを供給する独占的供給体系を持っているためだという分析だ。また、正式サービスセンターでは、純正部品の使用だけを強制しており、価格の安い互換部品で修理するのも難しい。「輸入車の修理費は呼び値次第」になりかねない背景でもある。
産業研究院(KIET)の李ハング・チーム長は、「輸入車メーカー各社は最近、販売拡大を通じた量的成長に重点をおいている」とし、「長期的な市場シェアの拡大のためには、高い修理代など、アフターサービス問題を積極的に解決しなければならない」と主張した。
gene@donga.com