中国の国家安全局要員は米ＣＩＡのスパイだった

中国の国家安全局副局長（次官級）の補佐官が、米中央情報局（ＣＩＡ）に情報を渡していたことが明らかになった。国家安全局は、韓国の国家情報院に該当する機関だ。８５年、兪強声・国家安全局外事局長が米国に亡命し、ＣＩＡに４１年間潜入していた伝説的な中国スパイ・金無怠を暴露して以来、最も衝撃的な事件だ。

●「美人局にかかってＣＩＡに情報を売る」

３日、ニューヨークタイムズなどによると、中国当局が国家安全局副局長の補佐官Ａ氏を逮捕したのは、今年１〜３月。香港メディアは、Ａ氏が今年３８才で、邱進・副局長の補佐官であり、邱副局長も今回の事件で、すでに処分を受けたと報じた。

ロイター通信は、消息筋の言葉を引用して、「Ａ氏はＣＩＡに抱き込まれ、中国の政治と経済、戦略的な情報を米国に渡してきた」と伝えた。さらに、「Ａ氏は英語が話せ、米国から数十万ドルを受け取った」と付け加えた。

Ａ氏がスパイ行為をすることになった背景には、ＣＩＡの美人局が関係している。数年前、香港のあるマンションで、女性との不適切な場面を写真に撮られた。この女性は、写真を武器にスパイ活動を強要したという。００年、米国に逃亡した徐俊平・国防部局長も、美人局にかかったという。一部では、Ａ氏が米国留学の時からＣＩＡに抱き込まれていたと指摘する。

米国と香港のメディアは、今回の事件が中国情報当局の中心で発生したという点に注目している。邱副局長は、胡錦濤・国家主席が率いる共産主義青年団の中心人物の一人だ。胡主席は、今回の事件の報告を受け、激怒したという。

今回の事件が、薄熙来事態と関係があるのではないかという見方も出ている。Ａ氏が薄熙来への捜査が始まった頃に逮捕されたためだ。邱副局長は、薄熙来事態を触発した王立軍・元重慶市公安局長が成都にある米総領事館で亡命を図った時、彼を北京に強制連行する責任を担った。Ａ氏は、王立軍を連行する緊迫した瞬間に起こった内容を最も近くで接することができた人物だった。中国情報当局が、このような状況で情報流出を防ぐために、平素から注視してきたＡ氏を検挙しなかったのではないか、という推測も流れている。

●火種が大きくならないよう沈黙する米中

今回の事件が起きて数ヵ月が経ったが、米中両国は公式の言及を避けている。中国の官営メディアは３日現在、この内容について口を閉ざしている。欧州を訪問中のクリントン米国務長官も、記者の質問に返答を拒否した。

米中のこのような反応は、今年に入って両国関係を危機に追い込む突発的な事件が立て続けに発生したため、これ以上の対立を避けたいとする共通認識のためとみえる。２月の王立軍、４月の陳光誠事件は、いずれも中国内の米国公館が介入しており、中国公安当局も介入した。このような中、代表的な情報機関である国家安全局とＣＩＡが関与した事件が公になれば、両国が外交的に持ちこたえることは容易でないと分析される。