民生団は、1930年代初めに日本が、朝鮮人と中国人で構成された東満州地域の抗日勢力を倒すために作られた工作組織だ。民生団のスパイ数人が逮捕されると、中国人は罪のない朝鮮人を銃殺し、朝鮮人幹部も生き残るために同僚を民生団員として告発する事態が起こった。金日成(キム・イルソン)主席は回顧録で、「わずか8、9人ほどの民生団容疑者のために、2000人以上の共産主義者が味方に虐殺された」と書いた。北朝鮮は、この時の過ちを繰り返さないために、住民に「民生団」事件の精神教育をする。
◆06年、「一心会」スパイ事件の首謀者チャン・ミンホは、刑務所で書いた手紙で、「統合進歩党(統進党)の事態は、民生団事件に似ている」と書いた。統進党のホームページに掲載されたこの手紙は、比例代表不正党内選に対して、「歴史的に外勢が私たちに強要、許可した形式的民主主義」であると一蹴した。党主流派の李石気(イ・ソッキ)、金在姸(キム・ジェヨン)議員の辞任を要求する革新派とメディアに対して「分派主義者」と規定した。選挙不正を覆って、矛先を別に向ける常套手法だ。チャン・ミンホは、北朝鮮式の口調をしばしば使った。特に、金正恩(キム・ジョンウン)3代世襲については、「代を継承する先軍政治の力量の増大」と称えた。それゆえ「骨の髄まで従北主義者」という声が出る。彼が、一心会の対北報告文で、北朝鮮を「祖国」と表現したことは、口先だけでないようだ。
◆統進党のホームページの党員掲示板には、チャン・ミンホを非難するコメントが続いた。「実際にスパイをし、進歩を色眼鏡で見る人間」、「党の『心臓』を北朝鮮に売り飛ばした人間。彼を擁護することを同志と見ることはできない」など。チャン・ミンホは08年、従北主義論議で統進党の前身の民主労働党を2分した張本人とされる。党の一部では、この手紙が従北主義を清算しようとする刷新ムードに冷水を浴びせるのではないか、憂慮の声が出ている。
◆チャン・ミンホが党主流派死守を促したのは、29日に予定された統進党全党大会を意識したためのようだ。主流派の動揺を防ぎ、中間地帯の政派を引き込んで、全党大会で党権を取り戻してこそ、李、金議員の除名も阻止できると考えたのだろう。しかし、古い従北メッセージで刷新の大勢を阻止できるだろうか。北朝鮮と水面下で共感したなら愚かなことだ。
鄭然旭(チョン・ヨンウク)論説委員 jyw11@donga.com