6月以降、国際穀物価格がうなぎ上りに高騰している。先月末、トウモロコシは1トン当たり323ドル、大豆は634ドルと、過去最高値を更新した。穀物不足による騒ぎで、ブラジルやメキシコなどで暴動が起きた08年の価格帯をすでに越えている。小麦は1年前に比べ、35%高の1トン=337ドルとなっている。世界最大穀物生産国の米国が、50年ぶりの干ばつに見舞われたことによる出来事だ。農産物価格が高騰し、物価が値上がりするのを「アグフレーション」という。農業(アグリカルチャー)とインフレーションをかけあわせた言葉だ。
韓国の穀物自給率は27%に過ぎない。世界5位の穀物輸入国であり、小麦やトウモロコシのほぼ全てを、大豆の91%を輸入している韓国としては、直ちに物価が心配になる。すでに、ラーメンや菓子、豆乳価格が値上がりし始め、ビールや飼料価格も値上がりの兆しを見せている。輸入額が増え、貿易収支にも負担となっている。これからがさらに問題だ。国際穀物価格が値上がりすれば、4〜7ヶ月後に国内物価に本格的に反映される。韓国農村経済研究院は、今年末と来年初頭の国内小麦価格は、現在より27.5%値上がりするだろうと見込んでいる。景気を率いる輸出が萎縮する中、これまで安定を見せていた物価さえ、揺れる兆しを見せている。
食べ物関連物価が値上がりすれば、庶民の暮らしはさらに厳しくなる。支出で占める食料品費の割合が大きいためだ。ただでさえ韓国経済は欧州発財政危機による「需要萎縮」を経験している。数年内に欧州状況が好転する可能性は低い。国際原油価格も依然高い。さらに、アグフレーションという「供給ショック」まで加わると、低成長の中で物価のみ上昇するスタグフレーションが始まることになる。物価が値上がりすれば、資金を供給できず、不況の克服はさらに遠くなる。低迷の悪循環だ。
農林水産食品部が最近まとめた対策は、小麦や大豆の輸入にゼロ関税の適用を続け、輸入金融を拡大し、米粉で小麦粉を代替させる程度のものだ。08年の騒ぎの時の対策をそのまま、二番煎じしたものだ。米シカゴに国際穀物会社を立ち上げ、穀物を直接導入するという計画を昨年立てたが、水の泡となって久しい。
アグフレーションは来年まで続くだろうという懸念もある。米国の作柄予測が日々悪化している上、東欧やロシアも不作だ。異常気候は年々激しくなるばかりだ。一方、中国やインドなどの新興市場での食糧需要は増え続けている。国産農産物の代替消費や国際穀物市場への参加、海外食糧基地の確保など、短期及び中長期的な対策を新たに手を入れるべきだ。