米ニューヨーク・マンハッタン南部のソーホーは高級ブランドショップと有名レストランが密集している地域だ。今こそニューヨークで最も人気あるおしゃれな街に挙げられているが、もともとは捨てられた工場地帯だった。現在のように活気溢れる地域に変貌させたのは芸術の力である。ニューヨークの製造業が衰退し、空き家になった建物が一つ二つ増えてから、1960年代初めに貧しい若手アーチストたちは安くて広い作業室を求めて次々とソーホーに集まった。その後、アーチストたちの趣味や眼識に合った個性ある衣装店や食堂も軒を連ねた。遅れていた街は「アーチストたちの街」に生まれ変わった。
◆ソーホーの開発を初めて主導したのは前衛的な芸術運動である「フルフサス」の主唱者ジョージ・マチューナス(1931〜1978)だった。白南準(ペク・ナムジュン)氏とも一緒に活動した同氏は、仲間たちと意見がかみ合わないと芸術への道に見切りをつけて不動産開発に眼を向けた。ソーホーにある建物を買い付けてアーチストたちに安値で供給し、アーチストの街作りを先導した。芸術は、大都市だけでなく田舎も復活させる。日本の小さな島である直島には銅の製練所があった。環境汚染のため住民が町を離れてから過疎化が進んだ。ところが、ある実業家の音頭で1989年から島の再生プロジェクトが展開され、今は世界の美術愛好家たちの巡礼コースとして脚光を浴びている。
◆文化を通じて地域の競争力を高めることを「ビルバオ効果」と呼ぶ。スペイン北部の港町ビルバオに因んでつけた名前だ。鉄鋼と造船などの主力産業が衰退してから失業率が急騰し、没落への道を歩んでいた町は、復活を図って変わった選択をする。ニューヨークのグッゲンハイム美術館の分館を誘致したのだ。1997年、世界的な建築家のフランク・ゲーリーの設計による美術館を開館すると、人口35万の都市に1年間で100万を越える人が集まった。
◆ソウル市は2008年から都心再生プロジェクトの一環として創作空間事業を開始した。遊休施設をアーチストの創作空間として支援し、地域住民に文化に身近に接する機会を提供するためのものだ。工場地帯だった永登浦区文来洞(ヨンドゥンポグ・ムンレドン)に位置する文来芸術工場もその一つ。工場が移転して空き家になった建物に集まった若手のアーチストたちは、最近、鉄工所路地の社長さんたちと意気投合して多彩な展示や公演を開催している。アーチストたちを支援しながら共同体の新しい未来を切り開く投資である。
高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com