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[オピニオン]薬物で走るサイクル

Posted October. 15, 2012 09:38,   

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ヤン・ウルリッヒ(40)という引退したドイツのサイクル選手がいた。00年のシドニー五輪・サイクル道路レースの金メダルリストだ。しかし、それより、「サイクル皇帝」と呼ばれた米選手、ランス・アームストロング(41)の陰に隠れた不運な選手としてより有名だ。世界最高の道路サイクルレースといわれているツール・ド・フランス大会でアームストロングが7回連続優勝した1999〜2005年、ウルリッヒは、準優勝を3度もした。しかし大勢の人たちはウルリッヒを、真なるスポーツマンとして記憶している。

◆03年、ツール・ド・フランス大会でウルリッヒは、アームストロングに次ぐ、総合成績2位だった。ピレネー山脈のリュズ・アルディダン丘を登る大会最後区間。歓声を上げる観客が振っていた小さなカバンに、アームストロングの自転車のハンドルが引っかかった。アームストロングは、自転車と共につんのめた。その時、驚くべき光景が広がった。アームストロングをびったりと追いついていたウルリッヒが、自転車を止めたまま、アームストロングが立ち上がった自転車に乗るまで、待ったのだ。その区間で、ウルリッヒは、アームストロングに40秒遅れ、結局総合記録では61秒の遅れで、準優勝した。

◆先日、米反ドーピング機関(USADA)は、アームストロングは絶えず禁止薬物を服用し、ドーピングテストを巧妙に騙してきたことを示す、調査報告書を発表した。ウルリッヒは、このニュースを聞き、悔やんだだろうか。そうではないような気がする。ウルリッヒも今年2月、禁止薬物を服用した事実が明るみに出て、05年以降の全ての記録を剥奪された。英BBCによると、アームストロングがツール・ド・フランスで7連覇を果たしたとき、同大会の3以内の選手のうち、禁止薬物を服用したり、スキャンダルに巻き込まれなかった選手は、ただ一人だった。晴れがましい7年間は、実は薬物で彩られた期間だった。サイクル選手たちには、消し去りたい時代になってしまった。

◆1988年、ソウルオリンピック・男子陸上100メートルで、9秒70という当時としては世界新記録で決勝ラインを通過したカナダのベン・ジョンソン、00年のシドニー五輪・女子陸上100メートルと200メートルで優勝したマリオン・ジョンソンも、後で薬物服用事実が分かり、記録と選手資格を共に失った。通産ホームラン762個で、米メジャー大会の野球記録を持っているバリー・ボンズも同様に、薬物スキャンダルで、大きく傷がついた。熱狂しながら見守ってきたスポーツの歴史的瞬間が、汚辱の歴史に変わる時、観客らは苦々しい裏切りを味わうことになる。

ミン・ドンヨン週末セクションO2チーム記者 mindy@donga.com