「07年11月28日、北朝鮮の金鎰迵(キム・イルチョル)武力部長は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の提案通り、西海(ソヘ)の海を渡すべきだ、そうすれば、西海北方限界線(NLL)を守ってやると主張した」(ピョン・ヒジェ・メディアウォッチ代表)。「そんな状況までは知らなかった。初耳だ」(陳重権・東洋大学教授)。ピョン・ヒジェと陳重権、保守と進歩陣営の代表的論客といわれている二人が討論バトル「死亡遊戯」を繰り広げた11日午後。インターネット・ゴムテレビは、生中継の間、頻繁に「死亡」した。司会者は、「知る権利が姿を消した12年の大統領選挙、討論に渇望を覚えている国民らのアクセスが殺到し、ネットサーバーがダウンしている」と述べた。
◆討論のタイトル「死亡遊戯」とは、ブルース・リーの最後の映画「死亡遊戯(The Game of Death)から取ってきた。ブルース・リーが階別に配置された武術の達人と戦いながら、1段階ずつあがっていく映画だ。1階の「NLLの真実は」の討論で、ピョン・ヒジェの武器は、盧武鉉政権が北朝鮮との会談で行った発言と、西海などのファクト(fact)だった。「盧大統領は西海全体を北朝鮮に渡してきて、国民に対してはNLLを守ったとうそをついた」。才気や瞬発力あふれることで有名な陳重権も、言葉に詰まった。「ファクトに押されましたㅜㅜ」。陳重権はツイッターで、潔く1回目の敗北を認めた。
◆国家安保と国民の暮らしに重大な影響を及ぼす話題に対し、大統領選挙候補とキャンプの関係者らの間で論争がないことは、深刻な問題だ。朴槿惠(パク・グンヘ)候補は、従来の合意精神を実践するものの細部調整をする、文在寅(ムン・ジェイン)候補は、NLL維持を前提に、西海平和協力地帯及び共同魚路水域の推進、安哲秀(アン・チョルス)候補は、NLL認定を前提に、南北共同魚路区域設定を公約に掲げているが、何がどう異なるか国民はよくわからない。どれほどもどかしかったら、「論客」らが「死亡遊戯」などと悲壮なタイトルを掲げ、大統領選挙候補らに代わって、討論バトルを繰り広げたのだろうか。
◆「盧武鉉政権当時、NLL無力化を試みた人物たちは皆、文在寅キャンプにいる」、「与党セヌリ党は、南北首脳会議の対話録を公開すれば、文在寅が打撃を受け、安哲秀に一本化されかねないため反対している。小細工をしているから、セヌリ党がやられるのだ」。ピョン・ヒジェによる攻めに、陳重権は討論の末尾に、「たとえ、盧前大統領が、NLLを引き渡す発言をしたとしても、それはあくまでもレトリック(修辞)に過ぎず、誇張しないでほしい」と切り替えした。北朝鮮に領土や領海を渡すという発言は、単なるレトリックであるはずはないだろう。
金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com