与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)、野党民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)大統領候補は、候補登録初日の25日にそれぞれ登録を終えて記者会見を行い、公式大統領選挙戦の幕が上がった。朴候補は、「大韓民国の新しい変化を引き出し、すべての国民の夢がかなう国を作るために、私の全てを捨てて国民の選択を受ける」と明らかにした。文候補は、「野党単一候補の重大な責任と政権交代の歴史的責任が私に与えられた。重い天命を受け止め、その責任に耐え、必ず勝利で報いる」と述べた。朴候補は大統領選で勝利できなければ政治人生を終えるとし、国会議員を辞職するという背水の陣を敷いた。文候補は、総選挙出馬の際に約束したように、大統領に当選すれば国会議員を辞職すると、条件付きで議員辞職の考えを明らかにした。
今回の大統領選挙は、理念的に保守右派vs進歩左派の性格を帯びることになった。大統領選挙史上、初の女性vs男性という対決構図になったという点も興味深い。朴候補が、朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の娘で、文候補は盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の秘書室長出身であることから、産業化勢力vs民主化勢力、「朴正熙vs盧武鉉」という構図になることも避けられなくなった。朴候補が全羅道(チョンラド)地域で、文候補が釜山(プサン)・慶尚南道(キョンサンナムド)地域でどの程度票を獲得できるかが注目されるが、過去と比べれば地域構図は緩和された方だ。むしろ、一つの家でも世代別に投票性向が異なる現象が現れている。朴候補が雇用を心配する若者の心をどれだけつかむのか、文候補が苦しい時代を生きてきた世代をどれだけ説得できるのかも関心事だ。
両候補の公約は似た点も多いが、経済民主化と福祉、北朝鮮政策、済州(チェジュ)海軍基地といった懸案に対する両候補の公約には、まだ政党の理念による違いが存在する。民主国家で進歩と保守が対決することは普遍的な現象だ。ただ憂慮されることは、今回の大統領選挙が「朴正熙vs盧武鉉」という枠に閉じ込められて、過度に過去に流れないかという点だ。前哨戦から文候補側は朴候補を対して、5・16、維新、人民革命党事件、正修奨学会問題などを取り上げた。朴候補側は、盧前大統領のNLL(北方限界線)関連発言や参加型政府の失政を指摘し、文候補を攻撃した。候補の政策やビジョン、資質といった大統領選挙の本質に関する事案を離れ、過去の攻防に流れることは、国の将来にとって望ましくない。
韓国経済は、先進国へ跳躍するのか、このまま低速するのかの岐路に立たされている。国際情勢と世界経済の状況も思わしくない。有権者は、現実に対する冷徹な認識をもとに、候補の未来ビジョンを点検し、誰が次期大統領になることが自分と韓国の未来により良いかを判断しなければならない。