母性愛が、不法のきっかけになるときもある。酒に酔って倒れていた同期の女子学生に対しわいせつ行為を行った高麗(コリョ)大学・医学部学生の母親の例がそれに当たる。息子の拘束を食い止めようと、「被害女子学生に人格的障害がある」という虚偽事実の書かれたアンケートを、同僚の医学部学生たちに配ったとき、このように自分に言い聞かせただろう。「私は母親だから」。被害者とその家族が受けるはずの恐ろしい2次的被害を、母親の名で背けただろう。その罪で、懲役1年の判決を受け、8月に法廷拘束された日、母親は息子のことをより心配したかもしれない。
◆母性愛の奴隷になるのは、階層を越えての現象だ。21日、ソウルのコンビニで強盗を働き、逮捕された50代の女性は、ギャンブルで数千万ウォンの借金をした息子のために、覆面をかぶったという。李明博(イ・ミョンバク)大統領の内谷洞(ネゴクドン)私邸敷地購入疑惑について捜査を行った特別検事チーム(特検)も、大統領夫人の歪んだ母性愛を暴いた。金潤玉(キム・ユンオク)夫人は、「息子の将来のために、私邸の敷地を息子の名義で購入した(不動産実名制違反)。息子がその過程で融資を受けた6億ウォンを返済できなければ、ソウル論峴洞(ノンヒョンドン)の自宅を売って返済する計画だった(不法贈与)」と、特検に供述した。
◆被害者の母親も、時には母性愛に目がくらむ。先月、慶尙南道(キョンサンナムド)では、中学生の息子が両親の顔を殴ったことがあった。その子に暴行を受け、全治5週の怪我を負った被害生徒の母親がやらせたのだ。両親の子供へのしつけが間違っているから、その代わりに打たれるべきだという言い分だった。彼女は、加害生徒の両親から、「非人道的行為を強要した」と訴えられた。最近、ヒットを続けている映画「ドントクライママ」は、同じ学校の男子生徒らに性的暴行を受けて自殺した娘のため、個人的復讐に乗り出した母親の物語だ。
◆奉俊昊(ボン・ジュンホ)監督の映画「マザー」も、極端な母性愛を描いている。母親は殺人犯の濡れ衣を着せられた息子を助けようと、事件の解明に乗り出すが、息子による犯行であることに気づき、いよいよ目撃者を殺害する。犯行の隠蔽に成功し、息子は釈放されるが、母親無しに育った知的障害の青年が、殺人犯に名指される。映画「詩」では、娘の代わりに、外孫を育てた祖母が、孫とその友たちらが女子生徒に性的暴行を加え、自殺に追い込んだことを知る。加害生徒の両親らは、被害者側と示談し、事件を隠すことができたが、彼女は孫を警察に通報し、自ら命を絶つ。女子生徒への謝罪だっただろう。ひたすら自分の子供に向けた盲目的愛着を乗り越えることができなければ、母性愛も「怪物」になりかねない。
シン・グァンヨン社会部記者 neo@donga.com