左に偏ってよじれた国家を「正常」にせよという国民の声を現政権が片耳で聞き流している間に、国民の生活は疲弊した。
にもかかわらず、保守右派と進歩左派の前例のない1対1の大会戦で、国民が次期指導者として保守陣営の単一候補である朴槿恵(パク・クンヘ)氏を選択したことは、韓国が直面した状況の厳しさによる。わずか5年で、国民を分裂させた「理念の時代」に戻ることはできず、1%にも満たない北朝鮮追従勢力が国政を揺るがす状況を招いてはならず、やっていることは満足できなくても保守勢力にもう一度危機の大韓民国に責任を負って経営する機会を与えなければならないということだ。
保守と進歩の真っ向勝負とともに、今回の大統領選挙は「2030」と「5060」の国家運営パラダイムをめぐる前例のない「ヘゲモニー争奪戦」とも記録される。今回のように親の世代と子どもの世代が「7対3」、「3対7」の構図で激しく対抗したことはなかった。第18代大統領選挙は、過去の大統領選挙から「独立変数」に作用した地域対立が「従属変数」に押し出され、世代対立が独立変数の座についた選挙と評価されるだろう。
もしかすると、横では理念で分かれ、縦では世代に真っ二つになったのが韓国社会の率直な自画像かもしれない。
理念対立と世代対立が複雑に絡まった「十字型民意」を貫く1つのキーワードがあるなら、それは「不安」だ。保守であれ進歩であれ、「2030」であれ「5060」であれ、また、その間に挟まった40代であれ関係なく、国民の多くはますます苦しくなる生活に疲れている。各自生きる道をめぐる利害関係は、「万人対万人の闘争」のように先鋭に対立している。これが「49対51」の票心に濃縮され、発現したのだ。
朴槿恵氏がまず力を入れなければならない課題は自明だ。統合である。49%の国民の喪失感を温かく包摂することだ。「半統領」という自嘲と非難の声が聞こえるようではいけない。過去最多の有権者の支持を受けた大統領であり、初の過半数の支持を得た大統領である。国民も分かっている。朴氏が掲げる100%国民幸福と100%国民大統合は達成が難しい選挙用プロパガンダということを。だとしても、勝者が野党との統合努力をするだけでも、反対に立った進歩有権者、「2030」有権者は癒される。「勝者一人占め」では、国家運営が不可能ということを歴代政権の失敗事例が如実に示している。朴氏は「公正な人事」を約束したが、容易なことではない。5年単任制の下で敵陣の人々が「変節者」という非難を甘んじて受け止め、朴氏が差し出した手を快く握ることはないからだ。いくつかの「もち」を分けるような地域配分の姿勢では、国民統合は遠のくという事実を正確に認識しなければならない。
国民は知っている。70%の中産層時代が簡単に訪れるわけがないということを。昨今の経済危機の状況が1997年の通貨危機に劣らず悪いということも体感している。この5年間に続き今後の5年間も3%水準の低成長が続くと予測され、「第18代大統領は最も不幸な大統領になる」とも言われている。朴氏は、信頼の政治家として、大統領選挙で国民の心をつかんだ。国民との約束を守ることは、国家指導者として備えなければならない重要な徳性であるが、選挙時に先を争って掲げたポピュリズム公約の全般的な手入れは必要だ。
経済民主化と経済成長の2兎を得るには、最高権力者の意志が重要だ。新大統領が直接出て、財界と労働界の譲歩を引き出し、2つの経済主体がウィンウィンの両羽を広げるよう臨まなければならない。金大中(キム・デジュン)政府で財政経済部長官を務めた康奉均(カン・ボンギュン)元民主統合党議員は、最近あるフォーラムで、「10年間低成長を続ければ、経済の善循環構造が破壊される。速く走る自転車はあまり倒れない」と言った。朴氏は、最悪の低成長の危機状況で、次期政府の経済政策の焦点を成長に合わせなければならないという元野党議員の指摘を再確認する必要がある。
G2(米国と中国)の対決、日本の極右化、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制の不確実性、長距離ロケット発射にともなう韓半島周辺国の軍備競争の憂慮の中で、新大統領の前には敏感な外交安保の難題が山積している。現政権の5年間続いた硬直した南北関係の突破口を見いださなければならない。ただ、その過程で国内対立のうずに巻き込まれると憂慮する声が多い。保守基調を堅持するものの、中道の支持を得て合理的進歩も共感できる北朝鮮政策の青写真を描かなければならない。
事実、今回の大統領選挙の間、保守は天国と地獄を行き来した。大統領選挙で辛勝したが、祝杯を上げる雰囲気ではない。「朴槿恵の個人技」で進歩の攻勢を阻止したと見られるためだ。自己革新の努力を怠る「古い保守」には、もはやバラ色の未来は保障されない。国会議員の削減を含め、朴氏が選挙期間に出した政治刷新案をセヌリ党が率先して強力に推進しなければならない理由だ。検察など絶対権力と見られてきた権力機関の改革も、任期序盤に電光石火のように断行しなければならない。権力分散を含む改憲も積極的に検討する必要がある。「祭りは終わった」と、政治刷新を生ぬるい態度で行う瞬間、第2、第3の安哲秀(アン・チョルス)が登場し、政界の既得権勢力を強打することは火を見るより明らかだ。
朴氏は最近のトレンドである「水平型リーダーシップ」、「開放型リーダーシップ」、「疎通型リーダーシップ」とは距離があるという指摘を受けてきた。保守内でも、朴氏から朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の「権威的リーダーシップ」が思い出されると言う人が少なくない。経済民主化に劣らない「権力の民主化」が必要だという話だ。そのうえ大統領府は「権威的な」構造と雰囲気のため、大統領と参謀の心の隙間が大きくならざるを得ない。自由に参謀の苦言が飛び交う風土を大統領府に作られなければならない。
政界ではすでに「群雄割拠」の憂慮の声が出ている。「朴槿恵グループ」の数人が勢力云々して権力を狙い始め、大統領選挙時に乱発したという選対委任命状を持って横行する腐敗関与事件が次々に起こる瞬間、「朴槿恵時代」は任期序盤からレイムダックを迎えるかもしれない。遠くを見るまでもなく、現政権も同じ失策を犯した。歴代政権の誤りを反面教師にしなければならない。
専門家の間で、今年20年ぶりに総選挙と同じ年に実施された第18代大統領選挙は、1987年劣らず定礎選挙と認識されてきた。今後、長く続く国家の未来を決め、社会の基本枠組みを整える礎を築く選挙という意味だ。朴氏はこれを「時代交代」と規定した。その2つの定礎選挙で、保守陣営とセヌリ党は勝利した。「与多野少」で任期をほぼ共にし、5年さらに国政を運営することになった朴氏とセヌリ党は、重い使命感を認識しなければならない。先進国入りの敷居で挫折を繰り返している韓国社会に新しい発展モデルを提示し、経済を締めつける古い政治システムを完全に正す重大な責任があるからだ。
今回の大統領選挙で、投票場を訪れた3000万の有権者の厳粛な行列は、それぞれ異なる価値と指向を持つ2つの大きな「波」だった。この波を融合し、国家的エネルギーに昇華させ、今後10年、20年の成長動力を作り出せというのが、今回の大統領選挙の民意であり、次期大統領の崇高な課題だ。
20日、「次期大統領としての夜明け」を迎える朴氏は、公式日程に先立ち、鏡に映った自分の姿を見て、考えに浸るだろう。凶弾で亡くなった父親と母親を思い出し、しばらく感慨にふけ、自分の肩に負わされた使命感を感じ、深呼吸するかもしれない。
2ヵ月後、朴氏は33年ぶりに大統領府に入る。「朴正熙の娘」ではなく、大韓民国の未来を担った「第18代大統領朴槿恵」として。1日も「母親の思いで民生大統領になる」という約束を忘れないことを期待する。
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