来月スタートする朴槿恵(パク・クンヘ)政府が、国家財政を投じて直ちに実行に移さなければならない公約は252にのぼる。現実的な財源調達案を講じることができなければ、発足直後から「不渡り公約」が溢れ出るだろう。企画財政部は、今月中に公約実現に必要な財源調達対策を講じると、政権引き継ぎ委員会に報告した。しかし、多くの公約に必要な莫大な財源を1ヵ月もない短い期間に用意できる妙案はないだろう。
朴次期大統領は、公約を実現するために、5年間で135兆ウォン、年平均27兆ウォンの財源を追加確保しなければならない。一部の省庁が公約履行に難色を示すと、朴次期大統領側は不満を露にした。「約束を守る政治家」のイメージを重視する朴次期大統領側が公約履行に意欲的であることは理解できるが、拙速に出した公約まで無理にすべてを履行しようとしては、国家財政は破綻する。朴次期大統領と引き継ぎ委員会は、与党内ですら「公約履行もいいが、現実的に容易でない大型予算は出口戦略も共に考える必要がある」と言う声に耳を傾けなければならない。
朴次期大統領側は、不必要な歳出を減らして歳入を増やし、年平均27兆ウォンの公約財源を調達すると言ったが、果たして可能だろうか。今年の福祉予算は初めて100兆ウォンを超えた。大統領選挙公約を履行するために、与野党が福祉予算を増額し、授業料半額と無償保育にかかるいわゆる「朴槿恵予算」を加えた結果だ。基礎老齢年金の引き上げや現役兵の軍服務短縮といった兆単位の予算が必要な公約も待機している。財源が必要であるにもかかわらず、バス業界のガソリン税の減免、中堅企業の税制恩恵、不動産取得税の減免延長といった税収を減らす公約も少なくない。一部で言われているように、アクセルとブレーキを同時に踏む格好だ。限られた財源で実現するには、公約の数を減らし、優先順位を決めるほかない。
「公約の副作用も最小限に抑えなければならない。朴次期大統領は、自活意志のある債務者の負債を減免または低金利融資に切り替えることができるよう18兆ウォンの国民幸福基金をつくり、がん、心臓疾患、難治病、脳血管疾患の4大重症疾患の治療費を100%保障すると約束した。しかし、債務者優先の政策が「借金をすべて返すのはバカだ」というモラルハザードを生んではならず、まずは病院に行こうという過需要を生み、健康保険財政を悪化させることが起こってもならない。
韓国銀行は、今年の成長率を政府展望値(3%)より低い2.8%と予想した。今年の税収目標である204兆ウォンを達成することは難しい。国税庁を動員して税を絞り取れば、経済が萎縮し、金が地下に隠れる逆効果を生む恐れがある。国税庁は、金融情報分析院(FIU)の現金取り引き資料をすべて活用すれば、年間最大6兆ウォンの税収増加が可能だと主張する。しかし、過去、政権の保護の下で国税庁が税務調査の刃を振り回したことを振り返れば、このような方式は個人の金融情報保護という金融実名法の骨格を損なう。国税庁の資料閲覧権を拡大するには、確実な個人情報保護対策と国税庁の政治的中立が優先されなければならない。
格差拡大による問題と少子高齢化による成長潜在力の萎縮を解決するために、福祉予算の増額は避けられない。租税研究院は、少子高齢化だけでも2050年には国家負債の割合が南欧の財政危機国水準に達すると予想した。現金をばらまくやり方の普遍的福祉よりも、保育や就職支援といった社会セーフティネットを堅固にする選別的、生産的福祉で、福祉支出の効果を高める必要がある。財政の健全性と福祉伝達システムの効率性の原則に立ち、公約と予算も原点から再検討しなければならない。必要なら、高福祉高負担の原則と増税による負担の分担を求める政治的リーダーシップを発揮してこそ「公約の呪い」を免れることができる。