京畿安養市(キョンギ・アンヤンシ)で、サムウォンプラザホテルを経営しているバク・ヒョンジュン社長(47)は、客室ごとに取り付けているテレビの台数分だけ毎月、受信料を払っている。1台当たり2600ウォン、客室は70室に上り、毎月受信料だけでも17万5000ウォンを払っている。そのほか、利用客らが外国放送を見られるよう、衛星放送の利用料金まで別途払っている。全体宿泊客の97%を占める外国人客のためだ。
「外国人客は、観光のため、ルームでテレビを見る時間などほとんどありません。韓国放送を見ることなどさらにないでしょう。なのに、なぜホテルはテレビ台数だけの受信料を払わなければなりませんか。一般住宅はテレビの台数とは関係なく、1台の料金のみ払うんですね。さまざまな税金上の恩恵やインセンティブはなくなったのに、払うべき負担金はそのままです。人手が必要でも、これ以上採用できる余力などあるはずがないでしょう?」
月間売上げ1億2000万ウォンほどの1級観光ホテルでは、これほどの費用は大きな負担ではないと思われるかもしれない。しかし、本音は違う。ここ数年、このホテルは赤字を何とか免れるほどの経営難に苦しんでいる。最大の打撃は、09年、観光宿泊業への付加価値税零税率の廃止で、売上げが一気に10%ほど減少したこと。外国人宿泊客の比率によって、土地や建築物に掛けられる財産税の50%減免の恩恵も、来年から無くなる。
観光ホテルへのインセンティブはなくなったのに、さまざまな負担金や固定費用はそのままとなっている。9階建てのこのホテルが、毎月払わなければならない交通誘発負担金は、月200万ウォンほど。築33年のビルの客室のメンテナンスを行わなければならないが、それだけのお金がないというのが、バク社長の悩みだ。
1980年のオープン当時、このホテルの職員は110人もいた。今は20数人の従業員のみ働いている。忙しい時は、社長が自分で駐車管理までしている。ホテルの入口で客を迎え、荷物を運ぶ「ベルボーイ」すら、正社員として雇えないのが現状だ。バク社長は、「父親から引き継いで33年間観光ホテルを経営し、外貨獲得に一役買っているという誇りでがんばってきているが、支援はなく、負担のみある現状に挫折するのは一度や二度ではない」とため息をついた。
●固定費用のために人員を削減するホテル
最近、韓国観光協会中央会は、テレビ受信料徴収制度の見直しを始め、租税特例制限法上の減免恩恵拡大、財産税分離課税の許容などを求める「観光産業をめぐる規制緩和や制度改善の課題」という提案を、文化体育観光部に提出した。
このうち、ホテルを建設する時、一定規模以上の駐車場を確保するように定めている規定は、観光ホテルを足を引っ張っている代表的「規制」の一つだ。サムウォンプラザホテルは、新築当時、ホテルの向かい側に70台あまりを収容できる4階建て屋外駐車場を建設した。現行の駐車場法の施行令によると、宿泊施設200平方メートル当たり1台を駐車できるスペースを備えなければならない。しかし、この駐車場は、乗用車のみ利用できるように低く建設され、最近必要な観光ホテルの駐車には使い物にならない。さらに、客の大半が、観光バスやタクシー徒歩でホテルに来ており、乗用車の駐車場はがらんとしている時が多い。
このホテルのイ・ミョンイル取締役(63)は、「外国人ツアー客は、バスの運転手が観光客と一緒に泊まる場合が多く、観光バスの駐車施設が絶対必要だ」とし、「しかし、規定にあわせて駐車場施設を作ったため、観光バスの駐車場を作る余力がないのが現状だ」と主張した。このホテルは最近、周辺の結婚式場の駐車場に別途の駐車代を払って、観光バスを止まらせている。
●雇用創出能力の優れた観光・宿泊業
「煙突のない工場」の代表とも言える観光宿泊業は、人手によるサービス基盤産業であり、ほかの産業に比べ、雇用創出能力がずば抜けて高い。専門家らは、政府の目標どおり、16年に外国人観光客が1200万人を突破すれば、現在より1万6400件の客室がさらに必要だと見積もっている。特急ホテル基準では、客室1個が増えるたびに、1.1人の職員がさらに必要なことを考慮すれば、1万8000件の雇用を作り出すことができる。
しかし、ホテル業界の関係者らは、このような予測が現実化するためには、ホテルを建設する分だけ、ホテルが人員を採用できるシステムを作るべきだと主張している。観光ホテルを建設しても、初期投資費用や運営費用が多くかかり、人員採用は難しいという。
景気開発研究院が発行した「ホテル業育成に向けた5大戦略」によると、ホテル業は、アプローチ性の優れた要地に立地する傾向があり、土地価格が高く、内装や家具などの設備も多くかかり、初期投資費用が多くかかる。それに比べ、収益は長期にわたって発生する。10年、京畿道の1級ホテルの平均利益率は2.2%ほどと、設備投資や人材採用が難しいのが現状だ。
そのため、最小限の宿泊施設のみ整えた「睡眠だけ取るホテル」が増えている。ソウル都心に観光ホテルを建設している事業者A氏は、「押し寄せてくる観光客を受け入れるため、ホテルの数だけ増やしても、ホテルは睡眠だけ取る機能的なところに止まることになる」とし、「最高級のサービスを誇る海外観光地のホテルと競争し、外国人観光客をリピーター客にするためには、各ホテルが「人的サービス」に投資できる構造を作らなければならない」と主張した。
●規模よりサービス室でホテルを評価すべき
中小規模の観光ホテル業界は、ホテル産業の活性化のため、ホテル設立の規制緩和と共に、さまざまな負担金の減免が必要だと指摘している。特に、外国人観光客に提供する宿泊サービスや食べ物への付加価値税を免除する、「零税率」の再導入が欠かせないという。
政府は、観光宿泊業の価格競争力を高めるために、1977年に初めて零税率を導入したが、廃止と適用とを繰り返し、10年、税制再編と共に、再び零税率を廃止させた。外国人観光客の誘致実績の高いホテルに、電気料やガス料金などを一時減免する恩恵も無くなった。
また、この分野の専門家らは、規模中心のホテル等級審査基準の見直しも必要だ指摘している。韓国のホテル評価の主要基準は、△客室面積や数、△浴室の面積、△飲食店の面積、△国際会議施設やロビー面積、玄関前の駐車スペースなどだ。一方、観光先進国の欧州や米国のホテル等級評価は、宿泊や食べ物・飲み物のサービス質を最優先順位に据えている。客室数が少なくても、客が満足できるサービスを提供すれば、高い等級が付けられる。
韓国文化観光研究院のキム・ヒョンジュ研究委員は、「今は、特1級から3級ホテルまで、評価上一律的基準を適用している」とし、「ソウルと首都圏に、さまざまな形のサービスを提供する宿泊施設が増えているだけに、審査基準も変わるべきだ」と主張した。