朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が5日、大統領秘書室長と4人の大統領首席秘書官を新しく抜擢する突然の人事を断行した。政府発足5ヵ月目に大統領府参謀を大規模に交代することは極めて異例のことだ。朴大統領が休暇から戻るやいなや大統領府の人的刷新というカードを取り出したのは、新たに国政ドライブをかけるという意志と見える。
許泰烈(ホ・テヨル)前秘書室長は人事委院長としての役割を十分に果たせず、大統領の信任を得ることに失敗し短命が予想されていたのも事実だ。今回の人事には、大統領府参謀陣がムードを一新してしっかりと国政のコントロールタワーの役割をしてほしいという朴大統領の注文が込められたと見なければならない。
秘書室長に起用された金淇春(キム・ギチュン)氏は、昨年の大統領選挙の時、朴大統領の元老諮問グループ「7人の会」のメンバーだった。朴大統領から信認を得ているというが、74歳という年齢で、朴正熙(パク・チョンヒ)、盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)元大統領時代に出生した旧時代の人物だ。法務部長官を務めた1992年12月、釜山(プサン)地域の機関長を集めて与党候補支持を誘導した「チョウォンふぐ料理店事件」に関与して起訴された。立法・行政・司法に通じ、朴大統領の考えをよく理解し、大統領府の効率に貢献するかもしれないが、国民に新鮮なイメージを与えることは難しい。
約2ヵ月間空席だった政務首席に元外交官の朴鉂雨(パク・ジュンウ)元欧州連合(EU)大使を抜擢したことも意外だった。朴氏が外交官として能力が優れているかも知らないが、政治と外交は別の領域だ。政務首席は与党と通じなければならないだけでなく、野党指導部とも水面下の接触ができる政治力を備えていなければならない。そのような地位に国会議員の経験もない非政治家をあてたことは新しい実験に近い。朴氏が政務首席の役割を果たせるか、正直に言って期待よりも憂慮が勝る。
これまで、朴大統領の人事は「手帳人事」、「暗闇人事」、「のろま人事」といった表現からも分かるように問題も多かった。人事は、能力と資質を備えた人を適切な地位に就かせる適材適所に劣らず「適時」も重要だ。今、韓国水力原子力社長をはじめ多くの公共機関長の人事が行なわれず、あちこちで開店休業状態だ。大統領秘書室長兼人事委員長の交代を機に、より幅広く人材を探し出し、厳正な評価を経て、できるだけ早く人事の空白を埋めなければならない。
朴大統領はこれまで「政治をしない大統領」と言われ、力点を置いた「未来戦略」や「創造経済」分野でもこれといった成果を出せずにいる。大統領府参謀の役割も重要だが、大統領の意志が何よりも重要だ。今回の人事を機に、朴大統領がもう少し積極的になり、政局の膠着状態を解消して国政に新しい風を吹き込むことを期待する。