彼女たちは地下室、車庫、物置のような暗く、何かに覆われた場所に隠れている。冬は主に、屋内に身を隠している。攻撃力は致命的だ。ガラガラヘビより15倍も強力な毒をもっている。雌だけが噛む…。ユーラシアや北米地域に生息する「黒い未亡人(black widow)」という蜘蛛についての説明だ。「黒い未亡人」は、スパイダーマンやXマン、ハルクなどを作った米マーブル社(Marvel Comics)が、長期間刊行してきたアニメシリーズのタイトルでもある。女性主人公は、超能力者であったり、それに匹敵する活躍をする。
◆黒い未亡人が集まって「黒い未亡人たち」という組織をつくり、世界中の懸念が強まっている。チェチェンテロ団の「黒い未亡人たち」は、ロシアにとっては悪夢だ。02年のモスクワ劇場での人質事件、10年のモスクワ地下鉄テロなど、この10数年間、数多い人命を奪ってきた主要テロに、彼女らが関わってきた。ロシアからの分離独立闘争を繰り広げ、夫や男兄弟を亡くしたり、性的暴行を受けた女性たちであり、敵愾心が、命への愛着よりも強い。爆発物を身につけ、「ドカン」と爆発することを殉教として受け入れている。自爆した女性たちは、あの世で死んだ夫や親戚たちに会うことができると信じている。
◆来月7日のソチ冬季五輪の開幕を控え、「黒い未亡人たち」が、ソチに潜入したという情報で、非常警戒態勢がしかれている。史上最も安全なオリンピックを開催すると公言してきたロシアが、数万人の警察や軍人で物々しい警戒態勢を構築したが、「黒い未亡人たち」に穴があけられた模様だ。ウラジーミル・プーチン大統領は、テロ攻撃に対し、人命被害も辞さない強硬鎮圧を行ってきたが、黒い未亡人らの活動を萎縮させることはできなかったようだ。米国やロシアの合同参謀総長らも、米国のテロに備えての電子装備を、ロシアに提供する案について議論した。
◆1972年のミュンヘンオリンピックは、パレスチナの「黒い9月」のテロによって血塗られた。イスラエルの選手9人と警察1人、テロリスト9人が死亡した。世界中の注目が集まるフェスティバルが開かれるソチで、40数年前の黒い9月のようなテロ事件が起きてはならない。米国は万が一に備え、対策作りに乗り出した。わが韓国政府も安全対策を一段と強化しなければならないだろう。
韓起興(ハン・ギフン)論説委員 eligius@donga.com