——声のトーンが高くて大きい
「私は元々、面白い人だ。この声に冗談を盛り込んで、飲み会の空気を盛り上げる。私が、『トガニ』を演出すると口にしたとき、友人らから、『なぜ、あんな映画を手がけようとするのか』と不思議がられたほどだ」
——デビュー作「マイファーザー」(07年)と、今回の映画とは両方とも家族物語だ。
「ふたつの映画共に、私の家族の物語だと思えばいい。『マイファーザー』は、米国での留学時代に作った短編の延長線上の映画だ。叔母が、養子として米国に行かされた後、産みの母親のおばあさんに会うために、帰国した時、強烈な印象を受けた。『怪しい彼女』の羅文熙(ナ・ムンヒ)のように、私の母も、父に早く死なれ、29歳の時に独り身になった。祖母と緒に暮らしていることも同じだ」
「マイファーザー」は、米国に養子に行かれた子供(ダニエル・ヘニ)が、韓国に来て、死刑囚となった産みの父親(キム・ヨンチョル)に会う物語。ファン監督は、ソウル大学新聞学科(現在の言論情報学科)を卒業し、米サウスカリフォルニア大学(USC)大学院で映画を専攻した。
——映画に実の祖母が登場すると聞いているが。
「主人公のシム・ウンギョンが健康ランドで着替えしていたところ、ばったり出会うおばあさんが、96歳の実の祖母だ。『トガニ』でも端役として出演したが、今回は出演料を2倍に引き上げた。ハハ」
—おばあさんが娘さんに生まれ変わる主人公役のキャスティングは、容易ではなかったような気がする
「シナリオの草稿は、おばあさんはグラマガールに変身する内容を盛り込んでいた。しかし、物語が進むほど、見え透いたことになり、面白みがなかった。それで、セクシーの代わりに猟奇、コミックキャラクターへと変えた。映画で単独主演を引き受けたことのないシム・ウンヨンのキャスティングを巡り、周りから反対が多かった。しかし、シム・ウンギョンを念頭にキャラクターを描いたため、物語が面白くなった」
——今や、シム・ウンギョンを除くこの映画は想像すらできない
「シム・ウンギョンは、張鎭(チャン・ジン)監督の『ロマンチックヘブン』(2011)でも、おばさんとして出たことがある。その時の演技が印象的だった。今は20歳だが、演技の感情をコントロールする能力が優れている。『一滴の涙だけを流し、薄い笑みを浮かべなさい』と演技指導をしたが、完璧にやりこなした。存在感の際立つ女優だ』」
——映画のメッセージは何か
「うちの母やおばあさんらは、彼女ら自身のためではなく、だれだれの母親やおばあさんとして生きた。その方々の人生は価値あるものだったと話したかったし、過ぎ去った人生を慰めてあげたい。今度生まれ変わったら、自由に生きてほしいと申し上げたい」
——社会派映画のシナリオがまた来るなら…
「話題を作り出すための義務感で手がける考えなど全くない。『トガニ』の時も、原作小説を読んで、映像で具現したいという欲があったから参加した。小説の中の背景となっている霧のかかったムジン市の都市の空気を描いてみたかった。映画的感じのある素材でなければならないような気がする」