2010年の哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没事件の時、座礁説を主張したシン・サンチョル氏が、今回は「セウォル号の行方不明者を助けられないのではなく、助けないのではないか」と言い出した。左派寄りのネットメディア代表を務めたこともあるシン氏は、集会の演説で、「沈没24時間が経過しても生存者を救助できない理由が分からない」としてこのように述べた。シン氏は、天安艦沈没の時、野党の推薦で軍民合同調査団民間調査員となり、「天安艦事故の原因は座礁であり、米軍が関与した」と主張し、名誉毀損の疑いで裁判を受けている。
ネットやSNSでも、政府が遺体収容と救助を故意に遅らせているといった怪談が広まっている。セウォル号沈没現場で1週間休まずに行方不明者の救助と犠牲者収容のために死闘を繰り広げている救助員への冒涜であり、悪意の陰謀説だ。「自主民報」のような親北朝鮮メディアは、天安艦沈没の時と同じように、「セウォル号の沈没は米国の潜水艦に衝突したためだ」と主張し、扇動に熱を上げている。
行方不明者の家族を利用して特定の目的を果たそうという「偽装」まで現れた。京畿道安山(キョンギド・アンサン)檀園(ダンウォン)高校の父兄会代表を装って報道機関のインタビューを受けたり、行事の進行を担ったソン・ジョングン氏は、新政治民主連合京畿道議員の次期候補に登録した政治志望生であり、父兄でも行方不明者の家族でもなかった。被害者と関係のない外部勢力が行方不明者家族の大統領府への抗議訪問を煽ったという具体的な証言も出てきた。与党セヌリ党の権恩嬉(クォン・ウンヒ)議員と一部ネットユーザーが、「密陽(ミルヤン)送電塔反対デモに参加した女性が、セウォル号惨事の現場で行方不明者の家族を装った」という誤報をSNSなどに書き込んだのも誤りだ。
警察は22日、総合編成チャネルMBNに出演し、「海洋警察が民間ダイバーの救助活動を妨害している」と虚偽の事実を流布したホン・カヘ氏に対して拘束令状を申請した。国家的、国民的惨事まで反政府扇動と対立に悪用しようとする一部勢力に振り回されないためには、メディアの役割も重要だ。怪談が足を踏み入れないよう政府も国民に正確かつ速かに事実を伝えなければならないが、メディアも正確で節度のある取材と報道をする責務がある。