ソンジュグループの金聖株(キム・ソンジュ)会長は、朴槿恵(バク・グンへ)大統領を「グレース姉さん」と呼んでいる。朴大統領の名前の最後の「恵」の字を、英語に訳した呼び名だ。2人の親密度を遠まわしに示している。氏は、12年の大統領選挙の時、与党セヌリ党の共同選挙対策委員長を務め、朴大統領の影武者のような憚ることの無い言動で話題を呼んだ。朴槿恵政府で、閣僚候補として、世間にうわさされたが、入閣リストに、氏の名前が見当たらなかったのは意外なことだった。
◆氏は、他界した大成(テソン)産業グループの(キム・スグン)会長の3男3女の末娘だ。金英大(キム・ヨンデ)大成産業会長、金英民(キム・ヨンミン)ソウル都市ガス会長、金英靛(キム・ヨンフン)大邱(テグ)都市ガス会長が氏の兄だ。アイビリーグ(米東部の名門大学)のアマースト大学やハーバード大学大学院を卒業した氏は、「両親から学費の支援は受けたが、事業は自分の手で成し遂げた」と強調している。金のスプーンを口にして生まれた財閥家の子息らとは、成長過程が違うという主張だ。
◆ハンドバックを生産・販売する会社を経営している金会長は、企業を経営する時間をいつ割いているのか気になるほど、外部活動を活発に行っている。米紙ウォールとリートジャーナルやフォーブス、フォーチュンなど、海外メディアの「影響力のある人物の」リストにも、頻繁に挙がっている。氏が最近、大韓赤十字社(韓赤)総裁に内定されたことは、破格の人事だ。朴大統領が氏に、「恩返しの人事」を行ったという議論はさておいても、韓赤捜査にふさわしいキャリアや資格を持っている人なのか疑問だ。これまでの韓赤総裁には、金相浹(キム・サンヒョブ)、姜英勳(カン・ヨンフン)、鄭元植(チョン・ウォンシク)など、首相経験者の重みのある人たちが多く抜擢された。赤十字社の救援活動のほか、南北関係の改善という重責が与えられたことと、無縁ではないだろう。
◆政権が、選挙で功を立てた人を重んじるといっても、与えるべきポストがあり、与えてはならないポストがある。韓赤捜査のポストは、金会長の体には似合わない服のような気がする。新しい韓赤総裁として、経営マインドを持っている企業家出身の人を、あえて座らせようとしたなら、経済界の大物を起用してこそ、共感を得ることができたはずだ。新政府発足後、人事を巡り、あれこれとうわさされていることが、朴大統領にはなかなか聞こえないような気がする。
崔永海(チェ・ヨンへ)論説委員 yhchoi65@donga.com