最近、米ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の価格は、5年5ヵ月ぶりの最低値の1バレル=63ドルに下落した。半年前より約40%も下がったのだ。ドバイ油やブレント油の価格も、軒並み原油安を見せている。米国のシェールガスの生産拡大やグローバル景気低迷、石油輸出国機構(OPEC)の減産合意失敗などが、複合的に影響を及ぼした。
国際原油価格が下がれば、韓国を含め、世界経済に前向きな影響が大きいのは、長い間の「常識」だった。特に、石油を全量輸入に頼っている韓国は、原油価格の下落は、原油導入のコストや生産単価、物価上昇率を下げ、好況へとつながったケースが多い。最近の経済現状は、「現有価格の下落=好況」という「石油経済学」が通じない。欧州や日本はもとより、中国などの新興経済国の景気低迷で、原油価格が下がっても、輸出が伸びづらい。ロシアやナイジェリア、ベネズエラなどの原油輸出国は、原油価格の下落で、急激に通貨安が進み、新興国発通貨危機説まで取りざたされている。インフレより怖いというデフレを巡る懸念が、より高まっている。
企画財政部(企財部)は一昨日、「原油安が我が経済に及ぼす影響」と題した報告書で、「原油価格の下落は、企業投資や家計消費を促し、時差を置いて韓国の経済成長に前向きな影響を及ぼすだろう」と見込んだ。しかし、原油価格の下落で、生産単価が下がっても、グローバル景気低迷や日本の急激な円安で、国内企業の輸出の困難が膨らんでいる。企財部も、「国内外の環境を考慮すれば、原油価格下落の前向きな波及効果は、かつてに比べ、弱まる可能性がある」と分析した。
昨日、韓国開発研究院(KDI)は、来年の韓国経済成長率の予測値を、従来の3.8%から3.5%に引き下げた。KDIは、欧州経済の長期的低迷や中国経済の急速な減速が重なれば、最悪の場合、3%前半まで急落しかねないと懸念した。低成長は失業や家計負債、財政赤字、福祉財源の限界など、多くの経済問題の根本的原因だ。国際原油価格が下がっているのに、経済は好転しそうもなく、政府や与野党の政治圏では、適切な解決策どころか、危機感すら殆ど目にできない。原油価格の下落を喜びながら、憂鬱な経済診断を下さざるを得ない理由でもある。