姦通は人類の歴史ほど古い罪だ。旧約聖書の十戒にも殺人罪に続き7番目の戒めとなっている。古朝鮮の八条法禁にも姦通罪があったと推定される。26日、憲法裁判所が姦通罪に対して7対2で違憲決定を下した。憲法裁は、「姦通罪は過剰禁止原則に反し、憲法が保障する国民の性的自己決定権とプライバシーの秘密を侵害する」との決定理由を明らかにした。婚姻と貞節に対する社会認識の変化を反映した決定と言える。
朴漢徹(パク・ハンチョル)所長と李鎮盛(イ・ジンソン)、金昌鍾(キム・チャンジョン)、徐基錫(ソ・ギソク)、趙龍鎬(チョ・ヨンホ)の5人の裁判官は、違憲意見として、「婚姻と家庭の維持は当事者の自由な意志と愛情に任せるべきであり、他律的に強制できない」と明らかにした。金二洙(キム・イス)、姜日源(カン・イルウォン)裁判官は、未婚の姦通相手を処罰し、姦通行為を懲役刑でのみ罰することは違憲だと指摘した。一方、李貞美(イ・ジョンミ)、安昌浩(アン・チャンホ)裁判官は、「婚姻と家族共同体の解体を促進する可能性があり、家庭内の弱者と子どもの人権・福利の侵害が憂慮される」として合憲の意見を出した。
これにより、1953年の刑法制定で導入された姦通罪が62年で歴史の中に消えた。地球上で姦通罪が残っている国はいくつもない。姦通罪の有無に関係なく、姦通が配偶者に精神的な苦痛を与え、家庭を破壊する行為であることに変わりはない。結婚には配偶者に対する貞操義務があり、結婚当事者はこの義務を誠実に履行しなければならない。ただし、この義務を破った場合、民事上の損害賠償責任は別として、国家権力が介入して刑事的責任を問うことはやり過ぎだというのが憲法裁の判断だ。
姦通罪が婚姻関係を保護する制度だとも言い難い。実際、姦通が刑事的に問題になるのは、婚姻関係が破綻し、相手に対する報復の手段と見なす時だ。憲法裁の違憲意見の一部は、「婚姻関係が破綻した状態で行われる姦通行為は非難の見込みがない」と指摘した。過去、姦通罪は社会的弱者である女性が慰謝料や財産を受け取る手段として度々活用されたが、今は不拘束捜査や執行猶予が大勢であり、力が弱まった。姦通罪の廃止によって、捜査機関の助けで離婚訴訟に使う証拠を収集することが不可能になる。社会的脆弱階層の女性が不利な状況に置かれる可能性があるため、民法上の損害賠償や財産分割請求、子どもの養育裁判など、女性を助ける補完策が必要だ。
憲法裁の少数意見で、姦通罪の廃止によって性道徳が乱れる危険があるという憂慮が指摘された。しかし、姦通罪を廃止した国で性道徳が堕落したという統計は見あたらない。同棲や独身の増加とともに性的自己決定の自由を拡大することが世界的な傾向だ。姦通罪のない結婚は、旧時代的くびきを取り除き、婚姻制度を現代化するという意味も含んでいる。