KIAの多くのファンは崔煕燮(チェ・ヒソプ=36)のことを「オオカミ少年」と思っています。ある意味では自業自得です。ここ数年間、崔煕燮は毎年の頭に「今年が最後だと思って最善を尽くしたい」とインタビューに答えていました。ところがシーズンが終わる頃には、この言葉を守ったことがありません。負傷のため、ときには個人的な事情を言い訳に、いち早くシーズン終了となりました。昨年は、とうとう1試合も出れませんでした。大リーグ初の韓国人打者だった崔煕燮の野球人生は、そうして沈むかのように見えました。
昨年末、金杞泰(キム・ギテ)氏がKIA監督に就任していなかったら、崔煕燮は歴史の中へ消え去ったことでしょう。ベテラン選手とのコミュニケーション能力に長けている金監督と出会った後、崔煕燮は改めて「最後」の決意を誓いました。
その崔煕燮を見るファンの視線は依然として冷めています。2日、日本沖縄県の金武町ベースボールスタジアムで会った崔煕燮は、「多くの人が『またそのうちにこけるだろう』とあざ笑っていることを、自分も感じている。以前は何を言っても非難されたし、そのことがつらかったこともある。今はファンとメディアの関心に感謝している」と話しました。
大柄の崔煕燮ですが、大変傷つきやすい性格の持ち主なのです。何気ないことにも良く傷つき、思うようにいかないとすぐ諦めてしまうことが多いです。そのため、野球を辞めようと思ったことも何度もありました。KIAの関係者は「これまでの崔煕燮は、体調が良くなかったこともあるけど、心の病が大きかった。今年は気持ちを思いっきり軽くしたせいか、大変明るくなった。この数年間で今年のように張り切ってチームに溶け込んだのは初めてだ」と伝えました。
崔煕燮は昨年末、日本の宮崎で行われた最終調整キャンプにベテラン選手としては唯一参加しました。強制ではなく自発的な参加でした。その後、今年のスプリングキャンプまでの4ヵ月間の長い練習をすべてこなしました。キャンプの終わり頃に腰に違和感を訴えましたが、練習試合まで参加しました。崔煕燮は「たぶん、以前の自分だったら、いち早く諦めて帰国していたと思う」と言って笑ってました。
今年のKIAの戦力では下位に沈むだろうと評価されています。軍に入隊したアン・チホンやキム・ソンビンなど離脱選手が多いのに、戦力補強は殆ど行われなかったからです。練習に励んでいるとは言え、沖縄で行われた韓国や日本チームとの9回にわたる練習試合で全敗しました。9試合で許した点数は103点に上ります。
不足する戦力をカバーできるのはチームの雰囲気です。その中心にいるのが崔煕燮です。崔煕燮は、とりあえず練習までは「完走」しました。金監督は「崔煕燮が負傷せずにエントリーに入っているだけでも、チームには大きな意味がある」と話しました。崔煕燮は「野球を辞めたいと思った瞬間に手を差し伸べてくれた監督と同僚たちがいた。これまではたくさんのことをもらってばかりだったが、これからは彼らのための役に立つことをしたい」とも言いました。
数年ぶりに同僚たちと同じスタートラインに立ちました。最後のテープを切る瞬間も同僚たちと一緒に残っていることができれば、ファンも崔煕燮の本気度を分かってもらえるのではないでしょうか。