ウォルマートは米国で最も大勢の労働者を雇っている会社だ。代表的な低賃金企業だと批判されているウォルマートが4月から、1時間当たりの最低賃金を連邦最低賃金の1時間=7.25ドルより多い1時間=9ドルに引き上げ、来年2月は1時間=10ドルまで引き上げると、先月明らかにした。ケインズ主義経済学者のポール・クルグーマンは2日付けの米紙ニューヨークタイムズのコラムの中で、「ウォルマートの見える手(walmart’s visible hand)」が、所得不平等を緩和させ、中間層の形成にも役立つだろうと賛辞を送った。
◆オバマ米大統領は今年1月の新年国政演説で、「1万5000ドル(約1647万ウォン)で、1年間家族を養うことのできる人があればやって見なさい」として、最低賃金引き上げの必要性について力説した。ウォルマートがオバマ大統領の国政基調に優先的に応えたかに見える。しかし、見えざる手(invisible hand)に強調点を置いた分析も少なくない。米景気が回復し、企業各社の間では労働者を獲得するための競争が激しくなると、ウォルマートが先手を打ったという。
◆崔鍫煥(チェ・ギョンファン)経済副首相兼企画財政部長官は4日、「最低賃金を昨年は7%引き上げたが、今年はもっと早いテンポで引き上げたいと思う」と述べ、企業側に労働者の賃上げを呼びかけた。韓国政府も米政府のように取り組むから、我が企業もウォルマートのように取り組んでほしいというふうに聞こえたりもする。しかし、韓国経営者総協会は崔首相の発言があったその翌日、今年適正の賃金引上げ率を1.6%以内と示した。適正な賃上げ率を示し始めた1970年代半ば以降最低値だった。
◆回復ぶりがはっきりしている米経済とは違って、我が経済はまだ手探りの状態だ。大手企業は賃金引上げに耐える余力があるが、純利益すら出ていない中小企業や自営業者に賃金を上げるようプレッシャーをかければ、かえって雇用を減らすことになる。そうなれば、賃上げで政府が期待する消費や投資刺激の効果が現れるどころか、状況はさらに悪化しかねない。我が事業に適した適切な賃金引上げのレベルを悩むべきであり、米国に批判無しに追従すれば、かえって副作用を招くこともありうる。
宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com