「成完鍾(ソン・ワンジョン)ゲート」の飛び火が政界を越えて言論界にまで広がりつつある。総合編成チャネル「jtbc」のアンカー、孫石熙(ソン・ソクヒ)氏が15日夜、自分が司会を務める「ニュースルーム」2部で、慶南(キョンナム)企業の故・成完鍾会長の声の録音ファイルを公開したのが発端だ。同日の放送で公開された肉声の出所は、故人が自殺する前に京郷新聞記者としたインタビューの録音ファイルだ。遺族と京郷新聞は、「jtbcが録音ファイルを同意なく無断で公開した」と法的対応を示唆した。新聞社と放送局の間に戦雲が漂っている。
◆このファイルは、15日に京郷新聞が検察に録音ファイルを提出した時に参加したデジタル関連の科学捜査専門家、キム氏が勝手にjtbcに渡したことが明らかになった。別の報道機関が取材した録音ファイルを許可なく放送したことは、報道機関のニュース競争がいくら熾烈であっても容認されない行為だ。世の中の隠された真実を追求し、不法と不正を暴く記者には、別の分野よりも厳格な職業倫理が求められる。他の人々への鋭い批判の基準は、報道関係者自らに徹底して適用されなければならない。
◆法的な判断や言論倫理を離れ、亡くなった人に対する韓国人の情緒からも、言論が守らなければならない限度を越えた。成会長の遺族は、「故人の肉声の公開を望まない」とし放送の停止を強く要請したが、黙殺されたという。放送であえて故人の録音の声を聞かせることは、公益の目的とは何の関係もない。今回のことは、政派的指向による信頼の失墜から商業主義の弊害まで、今日の言論が克服しなければならない様々な課題を考えさせる。
◆孫石熙氏は録音ファイルの公開について「市民の知る権利」のためだと主張したが、世間では視聴率が目的だと見ている。視聴率調査会社ニールセン・コリアによると、成完鍾会長の肉声が放送された日、「ニュースルーム」2部は視聴率が4%を超えた。「ニュースルーム」1部の視聴率2%に比べてほぼ2倍の上昇だ。毎年、某週刊誌のアンケート調査で、言論人の信頼度と影響力部門で1位を占める孫石熙氏。今、彼はほくそ笑んでいるのだろうか。
高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com
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