北朝鮮が8日、朝鮮アジア太平洋平和委員会を通じて韓国政府とメディアが北朝鮮の最高尊厳を冒涜したとし、「冒涜・中傷挑発を続ければ、李姫鎬(イ・ヒホ)氏の訪朝が台無しになる可能性がある」と警告した。金大中(キム・デジュン)元大統領の夫人、李姫鎬氏の8月5〜8日の平壌(ピョンヤン)訪問に合意して2日後にこのような反応を見せ、北朝鮮の真正性を疑わざるをえない。今年5月、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の開城(ケソン)訪問を前日に中止した北朝鮮が、李姫鎬氏の平壌訪問の合意を反故にする可能性もある。尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は9日、寛勲(クァンフン)クラブ招請討論で、「膠着した南北関係を解く契機になり得るが、北朝鮮側のメッセージが否定的なので心配だ」と述べた。
李姫鎬氏の訪朝は北朝鮮が提案した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は、昨年12月の金正日(キム・ジョンイル)総書記の3周忌に花を送ったことに対して謝意を表し、李姫鎬氏の平壌訪問を要請した。李氏側は今年5月の訪朝を希望したが、北朝鮮側が先送りし、日程の確定が遅れた。今回も、李姫鎬氏側は陸路訪問を望んだが、北朝鮮側は航空便を利用した西海(ソヘ・黄海)直航路を提案した。招待しながら、いちいち注文をつけることは礼儀ではない。
北朝鮮が主張した「最高尊厳の冒涜」は、金第1書記が最近竣工した順安(スンアン)空港新庁舎を見学したことの国内報道を指すとみえる。一部の韓国メディアは、北朝鮮が順安空港新庁舎を宣伝するために李姫鎬氏の西海直航路の訪朝を要請したと指摘した。これがなぜ最高尊厳の自尊心に触れたのか、理解できない。
李姫鎬氏が、南北硬直局面で両指導者のメッセージを伝えるメッセンジャーの役割を果たせるなら、凍りついた南北関係を和解に導く契機になり得る。李姫鎬氏の訪朝がうまくいけば、南北当局間対話も可能になるだろう。統一部が、アジア太平洋平和委の談話文に遺憾を表明しながらも、「李姫鎬氏の訪朝に必要な支援をするという立場に変わりはない」と明らかにしたのは、南北対話を期待するからだ。光復(解放)70年の今年を南北が対話もできずに空しく送る場合、南北和解は一層遠ざかるほかない。そのような結末は韓国にとっても北朝鮮にとっても不幸だ。
北朝鮮が対話の意志があるなら注文するだけでなく、開かれた姿勢で臨まなければならない。政府も、李姫鎬氏の訪朝が実現する場合、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領のメッセージを含めどのように対応するのか綿密に準備する必要がある。