「最近は、婦女者らのおきてが乱れて、目に余るほどになりました。(中略)しかし、『三綱行實圖』は特殊な何人かの優れた行いであり、一般庶民や婦女らは学ぶのは難しいと思います。願わくば、日常生活に最も切実なもの、例えば、「列女伝」をハングルで翻訳して刊行し、頒布して下さい」
朝鮮時代の経書管理や王諮問機関の役割を果たしていた弘文館が告げた内容だ。これに対して、中宗(チュンジョン)は、「もっともな言葉だ。そのまま実施したまえ」と答える。朝鮮王朝実録・中宗12年(1517年)6月27日の記録だ。当時、朝鮮は社会全体が道徳性危機に見舞われ、その代案として中国「列女伝」を翻訳して配布する計画を立てた。列徐伝は元々、前漢時代の学者・劉向(紀元前77〜6)が書いた原本に、後代の複数の中国作家が書いた物語を混ぜたものであり、虚構の混じった「三國志演義」のような文献小説だ。中国歴史の中の聖女や悪女など、様々な女性の人生を扱っている。朝鮮王朝実録・太宗(テジョン)4年(1404年)の記録を見れば、明から「列女伝」500部を輸入したという記録もある。
文献記録だけで伝えられてきた16世紀のハングル版「列女伝」が見つかって、ハングルの日(9日)を控え、宝物指定が進められている。
国立ハングル博物館は7日、「朝鮮初期の『古列女伝の諺解本』を入手して、宝物指定に取り掛かっている」と明らかにした。諺解とは、漢文の原典をハングルに翻訳したものを意味する。
この本は縦31.5センチ、横20.5センチのサイズで、計40章からなっている。内容を具体的に描写する絵が13枚も含まれている。エピソードごとに、まず絵が出てきた後、漢文やハングルが同時に出てくる(図参照)
この本は1543年、文章実力の優れた文人・申晸(シン・ジョン)と柳恒(ユ・ハン)が翻訳し、書道家の柳耳孫(ユ・イソン)が文を書いた。中国「列女伝」の中の顧醅之(344〜466年)の絵は、ハングル版では中宗当時の天才画家と言われていた李上佐(イ・サンジャ)が描きなおした。古文研究家のパク・チョルサン氏は、「ハングル版列女伝は、王の命令で翻訳・刊行され、当代最高の人物たちが作業に参加した」と言い、「翻訳、文字、絵画などのレベルにおいて、その時代を代表する出版物だ」と説明した。
列女伝にまつわる朝鮮王室の興味深いエピソードもある。実録の中で世宗(セジョン)はこう語る。「…奉氏に『列女伝』を教えさせた。なのに差し出がましく、こんな無礼なことをするなんて、果たして嫁の道理にしかるべしと言えるだろうか!」。世宗の2番目の世子嬪だった純嬪奉氏が酒を飲み、同性愛に嵌ると、性理学的倫理観を身につけさせようと「列女伝」を読ませたのだ。
朝鮮王室は、王宮で読まれていた列女伝をハングル(当時は諺文)で翻訳して百姓らに普及させては、という政策提案がなされると、1543年(中宗38年)、国立印刷機関の校書館を通じて、ハングル翻訳を開始した。
ハングル博物館が入手したこの本は、2013年、美術品のオークションで初めてその存在が明らかになり、2000万ウォンほどで、古美術専門家のキム・ヨンボク氏に落札された。キム氏はこの本を再び鮮文(ソンムン)大学研究チームに史料として提供し、研究過程で「価値の高い珍本」という結論が出た。
その後、ハングル博物館がキム氏を説得して、7000万ウォンで購入した。ハングル博物館のコ・ウンスク研究官は、「15、16世紀の中世国語資料は大変珍しい」と言い、「現代語で翻訳して、11月に刊行する計画だ」と明らかにした。
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