見れば見るほど映画「ダークナイト」(2008)のジョーカーと「クロウ/飛翔伝説」(1994)のエリック・ドレイブンは似ている。
俳優もそうだ。ジョーカー役のヒース・レジャー(1979〜2008)は、映画上映の前に薬物併用摂取による急性薬物中毒が原因で死亡した。ドレイブン役のブランドン・リー(1965〜1993)は、映画撮影中、小道具の拳銃の発砲事故で死亡した。リーは、ブルース・リーの(1940〜1973)の長男だ。
「Aは沈む世の中を救う鍵を握る救世主。しかし、今は自分の心身を保つこともできない。去った愛を忘れられず、個人的な復讐ばかり考えるためだ。いつも悲しい表情をするAは…」
1990年代に私はこのようなストーリーとその主人公Aに自分を同一視させた。「ダークシティ」(1998)のジョン・マードックも、「ダークシティ」の商業的拡張版と言える「マトリックス」(1999)のネオも、なんだか自分の話のようだった。私のはかない期待と世紀末への不安感。
その頃、人気を得た米国のバンド、ストーン・テンプル・パイロッツの元ボーカルのスコット・ウェイランドが3日(現地時間)死亡した。享年48歳。彼は、公演を控え、ツアーバスの中で眠って亡くなっているのが発見された。90年代からはまった薬物中毒が死因と推定されている。
パイロッツは初期にパール・ジャムの追従と見られた。今でもマニアが認めるいわゆる「グランジ・ビッグ4」(ニルバーナ、パール・ジャム、アリス・インチェインズ、サウンドガーデン)には入らない。「ビッグ5」を挙げたり「交代選手」を語る時に取り上げられる。
しかし、パイロッツとウェイランドのセンスは卓越していた。「Sex Type Thing」、「Vasoline」、「Big Bang Baby」などの活気に満ちた曲も良かったが、「Plush」、「Creep」、「Big Empty」、「Interstate Love Song」のウェイランドのハスキーで寂しげな声は忘れられない。ウェイランドは、ガンズ・アンド・ローゼズのメンバーと「ヴェルヴェット・リヴォルヴァー」で活動し、「ハルク」(2003)の主題曲(「Set Me Free」)も歌った。ソロアルバム「12 Bar Blues」には、ダニエル・ラノワとブラッド・メルドーも参加した。
「クロウ/飛翔伝説」のサウンドトラックにある「Big Empty」は、音符をだるく切るアコースティック・スライドギターの荒涼さ、セロハンで偽った鋼鉄壁のように突然崩れ落ちるエレクトリック・ギターの音の落差が絶妙だ。ウェイランドのボーカルが綱渡りをする。「歩きすぎれば靴底がすり減るように/あまりにも多くの幻覚が私の魂をすり減らす」
ある人の1994年は、真っ黒な洞窟の中で答える。「Frances Farmer Will Have Her Revenge in Seattle」(ニルヴァーナ・1993)の歌詞は、誇張された自虐と厭世でけがれたその時の感情を一節で要約した。「悲しみの中にある慰めが懐かしい…」
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