牡丹峰(モランボン)楽団は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の指示で2012年に創立された北朝鮮版ガールズグループだ。労働新聞は5月、この楽団の歌を「何千万トンの食糧にも比べることができない巨大な力」と称賛した。12日、中国・北京で開かれる予定だった楽団の初の海外公演が開始直前に突然中止になり、団員が皆帰国した。金第1書記が撤収を指示したとみられ、中朝間の外交への影響が大きくなる見通しだ。
公演中止について、中国メディアは、「疎通に原因がある」と報じたが、解釈が交錯している。金第1書記の水素爆弾保有発言を中国が不快に思い、政治局員から副部長級に公演観覧要人の級を下げたため、金第1書記が憤慨したという。金第1書記政権後、冷え切った関係を解くために両国が緊密に協議して推進した行事が終盤に中止になり、金第1書記の訪中も簡単に実現しそうにない。今年10月、中国序列5位の劉雲山・政治局常務委員の訪朝で関係改善の兆しを見せたが、中朝関係が再び予測できない状況となった。特に、北朝鮮の水素爆弾が葛藤の端緒になり、核問題が再び浮上する可能性もある。
北朝鮮は同日、開城(ケソン)で開かれた南北当局会談も、「韓国側は金剛山(クムガンサン)観光再開の意志がないようだ」とし、一方的に閉会させた。金第1書記は、国内では自分勝手にできるかも知れないが、中朝関係や南北関係でもこのような態度を見せるのは、指導者として力量の限界を露呈したも同然だ。北朝鮮は、南北当局会談で金剛山観光の再開を執拗に要求し、離散家族再開と結びつけた。ただ金にだけ関心があるという浅はかな下心がうかがえる。
皮肉にも、12日は2年前に金第1書記が叔母の夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑して世界を戦慄させた日だ。国際社会の規範と慣例を無視する金第1書記の予測不可能性と残忍さは度を超えた。国連安全保障理事会が2年連続、北朝鮮人権問題を上程して批判しても、金第1書記は気にもとめない。
金第1書記は、核とミサイルで威嚇すれば世界が怖気づいて北朝鮮が望むものを出すと勘違いしているのかも知れないが、世界が北朝鮮を中心にまわっているのではない。中国、韓国との関係を改善できなければ、北朝鮮が孤立から抜け出す道はない。中朝関係が悪化することが韓国に有利なのか不利なのか予測できない。何よりも金第1書記の気まぐれ統治に振りまわされないことが重要だ。