親中志向の国民党から独立志向の民進党に政権が代わり、両岸(中国と台湾)関係がどのように変わるのか関心が集まっている。蔡氏は当選の第一声で、「中華民国は民主国家として民主空間が必ず尊重されなければならない。(台湾の主権を)抑圧することは、両岸関係の安定を破壊することになるだろう」と述べた。対中政策の変化を予告したのだ。また、「今のように平和で安定した状況を守るよう努力するが、過去の政策の誤りを原状回復させる」と明らかにした。馬英九政府8年間の親中政策から脱却する考えを明確にしたのだ。
世界が、経済大国である中国との経済協力に向けて血眼になっているが、台湾は反対に進んでいる。蔡氏は、馬英九政府の経済失政に対する有権者の審判によって圧勝を収めた。経済政策の失敗の核心には、政権獲得後に行った「親中政策」がある。中国に近づきすぎて台湾が経済的に被害を受けたということだ。
「諸刃の剣」となった「両岸蜜月」
馬前総統が2008年に初当選した時、台湾は世界的な金融危機の高波に飲み込まれていた。中国との協力で危機を切り抜けるという馬総統の訴えが有権者の心をとらえた。実際に、中国という大きな市場が開かれ、部品素材産業を中心に活力を取り戻し始めた。
前任の民進党の陳水扁総統時代は、「小三通」(通航、交易、郵便の往来)といった一部の両岸交流はあったが、陳総統が「一つの中国」原則を受け入れず。緊張関係が続いた。
馬総統は、「両岸協力」の成果で再選にも成功した。2012年の選挙での馬総統の得票率58.5%は歴代最高だった。しかし、馬総統政権8年の「両岸蜜月」は、現在「諸刃の剣」となった。国民党の周立倫候補が総統選挙史上最大の308万票差で敗北したのも、現政権の「両岸蜜月」に対する審判による。
中国で最適条件を備えた台湾がなぜ?
英国、オーストラリアなどが伝統的友好国の米国の気分を害しながらも昨年中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加したのは、世界第2位の経済大国である中国市場を諦められなかったためだ。中国が推進する「一帯一路」(21世紀陸上と海上のシルクロード)には、アジアや欧州だけでなくアフリカ諸国まで参加しようと殺到する。台湾だけが少し遠ざかる必要があると考えている。
台湾が中国から距離を置く現象は古くない。1989年6月、中国・北京の民主化デモを軍隊が流血鎮圧した天安門事件が発生した時、欧米の企業は不安定な事業環境を理由に引き潮のように中国を離れた。
しかし、台湾の企業は大陸に残った。むしろ中国本土に進出した。現在「台商」と呼ばれる大陸の台湾企業は約30万社にのぼる。台湾は地理的に中国と近く、言語が同じだ。1949年以前に台湾に来た内省人は、全体人口の85%を占める。彼らは、大陸に親戚や友人がいる。台湾企業はこのように中国で事業する最も良い条件を備えている。
なぜ台湾は中国から遠ざかろうとするのか。台湾政治大学市場予測研究中心の洪耀南代表は、「親中国政策自体が誤りなのではなく、『誤った親中政策』を使ったためだ」と指摘した。過度な中国依存のため、中国経済が低迷すると台湾経済も共に低迷することになり、「政経癒着企業」だけが両岸協力の果実を占めた。また、所得不均衡が深刻化し、上位5%と下位5%の所得差が、2007年の66倍から2013年には99倍に増え、社会に踏み出した若者の初任給が減り、生涯働いてもマイホームを買うことができない状況になった。
台湾経済部傘下中華経済研究院大陸経済研究所の劉孟俊所長は、「台商が大陸で稼いだ金を台湾に持って来れば、財産税を大幅に引き下げる措置を2009年に実施した」とし、「入ってきた金が不動産に集まり、バブルを生んだ」と指摘した。
「脱中国認識」の現住所
このような「両岸協力の副作用」は、両岸関係の世論調査からもうかがえる。台湾の代表的な世論調査機関「台湾智庫」が昨年11月に実施し最近公開した世論調査によると、両岸間の経済統合で「犠牲になった」という回答が39.9%で、「恩恵を受けた」(21.1%)よりも高かった。
台湾経済の中国依存度が高すぎるといった回答は62%で半数を超えた。回答者は、今後、中国との経済協力を拡大する(17.6%)よりも、他国との経済協力を増やさなければならない(63.2%)と主張した。
さらに台湾に来る中国観光客が「多すぎる」(44.5%)が、「適当」(30.6%)または「少なすぎる」(8.5%)より多かった。中国観光客が多すぎると考える理由としては、「生活の質が下がることが憂慮される」(66.9%)という回答が多かった。このため、中国が観光客を減らす措置を取れば、「利益がより多い」(9.9%)と「利益になる」(25.8%)など「良い」が35.7%で、「悪い」(27.2%)より高かった。韓国、日本などが中国人観光客を指す「遊客」誘致に努めるのとは大違いだ。
中国の投資についても、先端産業の買収合併は、「安全保障に及ぼす影響が憂慮される」という回答が60%だった。特に、中国資本が台湾の新聞や放送に投資すれば、言論の自由が萎縮すると憂慮された。
「台湾智庫」の頼怡忠副社長は、「世界経済の環境が良くない状況で、韓国、日本、フィリピンなどは善戦したのに台湾だけが被害を受けたのは中国と近すぎたためだと、有権者が考えていることを示している」と強調した。
타이베이=구자룡특파원 台北=ク・ジャリョン特派員 bonhong@donga.com