親子で大統領を輩出した米ブッシュ家が、3度目の「家門の栄光」の実現に失敗した。大統領選挙共和党候補選び候補に乗り出したジェブ・ブッシュは、候補選びの期間中、群小候補の間に混ざっていたが、予選の敷居をまたぐことができず、放棄を宣言したのだ。夫の後ろで辞任演説を見守っていた妻のコロンバ氏は、涙を流した。あまりにもシャイな性格のため、大衆の前に出ず、大統領選挙への立候補も喜ばなかったという妻の涙。生涯遮るもののない大通りを歩いてきた夫の喪失感や挫折が、どれだけもどかしっただろう。
◆右往左往しているドナルド・トランプに比べれば、ジェブ・ブッシュは柔弱なお坊ちゃんのイメージが強い。しかしブッシュは、恋においては誰にも止められない猪突猛進さを発揮した。名門私立高校と言われているフィリップスアカデミーの3年生に在学中、校内プログラムでメキシコに行った彼は、女子高生のコロンバに出会って、ひとめぼれした。白人上流社会で配偶者を探す家門の伝統や家族の反対を押し切って、彼は片言の英語すら話せないヒスパニック系の初恋相手との結婚を推し進めた。40数年間の幸せな結婚生活を営んできた彼は、自分の人生を「コロンバ以前とコロンバ以後」に分けて語る。
◆政界では、このような愚直さや底力を適切に示すことができなかった。父親と実兄という二人の元大統領の全面的支援、両党候補の中では最多の選挙資金の確保、フロリダ州知事出身のキャリアなど、何一つ遅れをとらなかったジェブ・ブッシュ。いざ、候補選びに飛び込んだら、人が彼の最大の強みとして評価してきた名門家出身の、準備された候補ということが、加点ではなく減点要因として働いた。最後のサウスカロライナ候補選びには、年老いた母親や兄まで呼んできたが、傾いた流れを覆すことはできなかった。
◆トラップブームの最大の被害者という声もある。制度圏(既得権?)勢力への憤りや反感が世論を左右したことで、大衆はブッシュの存在に徹底的に背を向けた。ブッシュの遅れた挫折が、改めて「金の匙だ」と威張ることもなければ、「土の匙だ」とわけもなく引け目を感じることでもないことを物語る。弱みが時には強みとなり、強みはすぐ弱みともなるという。人生の中でよく目にする平凡な真理だ。
高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com