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[オピニオン]「月300万ウォンの無償金」の誘惑を払いのけたスイス

[オピニオン]「月300万ウォンの無償金」の誘惑を払いのけたスイス

Posted June. 07, 2016 07:25,   

Updated June. 07, 2016 07:36

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スイスのルツェルンに行けば、自然の砂岩の崖に刻まれた「瀕死のライオン像」を見ることができる。致命傷を負って苦しみながら死んでいく石像のライオンは、スイス国民の忠誠心と勇敢さを象徴する。この記念碑は、フランス革命で、ルイ16世一家を宮殿で身を呈して守ろうとして1792年8月10日に亡くなった786人のスイス兵を称えて1821年8月10日に完成した。

◆別の近衛隊員は皆逃げ、スイス兵だけが壮絶な最後を迎えた背景には、この国の悲しい歴史が隠されている。一度でも信頼と信用を失えば、子供の世代は永遠に兵になれないと信じられたため、死で契約を交わしたのだ。今でこそ世界の富裕国だが、過去スイスは貧弱な自然環境と強大国に挟まれて苦しめられる欧州の貧困国だった。中世以降、生き残るために他国の戦場に行き、忠実さで伝説的な名声を得ることができた。バチカンのローマ法王庁も1506年からスイス近衛隊が守る理由だ。

◆傭兵に行っても命を捧げて任務を全うする先祖の精神を受け継いだスイス国民は、無償を嫌うことで有名だ。そのためか、非効率な福祉システムをなくすのではなく、働かなくても最低限の生活を保障するために月300万ウォンの基本所得を支給する案が6日、国民投票で77%対23%の圧倒的反対で否決された。無償ポピュリズムに誘惑されず、合理的で現実的な判断を下した結果だ。最低生活保障制を議論するオランダ、フィンランドなどにどのような影響を及ぼすのか気になる。

◆スイスでは10万人以上の署名を受けた事案に対して国民投票に委ねることができる。今回の投票は、最低生活保障の導入を支持する団体(BIS)が13万人の署名を集めて実現した。BIS側は「これからが始まりだ」と話す。最低生活保障をテーマに設定して国民的関心を高めることが第1の目標だったということだ。今後も議論は続くとみえる。それでもスイス国民が「瀕死のライオン像」を記憶する限り「無償の誘惑」にはやすやすと乗ることはないだろう。

高美錫(コ・ミソク)論説委員mskoh119@donga.com



고미석기자 コ・ミソク記者 mskoh119@donga.com