7日午前に訪れたロンドン郊外のマンチェスターは、英国特有の赤レンガ造りの家が立ち並ぶ閑静な街だった。ドアを開けて入ると、1階の窓の近くに座っている第7回朴景利(パク・キョンリ)文学賞受賞作家、アントニア・スーザン・バイアットさん(81)の姿が目に入った。
「私は太陽が好きです。日当たりがよく、庭も見えるここが好きです」
バイアットさんは1974年からこの家で43年間暮らしている。居間の隣、空が見える天井から自然の光が入り、緑の木の枝が垂れ下がる所に食卓が置かれていた。子供たちの学校に近いところを探して選んだ家だが、家の周辺に木が多くて気に入っているという。バイアットさんは昨年5月に足を怪我して以降、1階の窓際の机で小説を書く。
バイアットさんは、朴景利文学賞に選ばれたことについて、「実に光栄で感謝する」と言い、何度も「韓国を行きたかったが残念だ」と話した。バイアットさんは体調が悪く、授賞式に出席できない。
バイアットさんは、「韓国の記者に自宅で会うことができてうれしい」と言い、韓国に自分の本を愛する読者がいることを喜んだ。バイアットさんは、「私は英国人や欧州人のために小説を書いているのではない。世界の多くの人が私の小説を読むということは、私の世界がそれだけ広くなったという意味なので幸せだ」と話した。
『抱擁』でブッカー賞を受賞したバイアットさんは、タイムズ誌が選定した第2次世界大戦後、重要な作家50人に選ばれた英国を代表する作家だ。そのバイアットさんに「良い本と悪い本はどう区別するのか」と質問した。
バイアットさんは、「悪い本は他の本と似ている本で、良い本は知らない新しいことを教えてくれる本」と定義した。特に、「言語の特性をよく生かした本が良い本」と言った。言語は人間だけが持つ固有の特性であるためだという。バイアットさんは、「猿は人間の言葉を分かるが、話をすることはできない。私はフランスの田舎に家があって毎年夏2~3ヵ月そこで過ごすが、フランス語で考えてみると、英語で考える時とは全く違う考えをすることができる」と話した。
自宅の居間の壁には数十点の絵が飾られ、ハリネズミやミミズクなどの動物の彫刻も多かった。芸術品の収集はバイアットさん夫妻の趣味でもあるが、芸術家である娘の影響も大きかった。1983年までロンドン大学で英米文学を教えていたバイアットさんには4人の子供がいる。
どうやって4人の子供を育てながら、小説をも書き、大学で教えたのだろうか。英文学の大家も育児の話が出ると首を横に振った。
「台所でガス台に鍋をのせ、片方の手でスプーンでかき混ぜ、もう片方の手は本を持っていました。集中しなくてはなりませんでした。夜更かしは慣れていましたが、朝起きるのは本当に大変でした。週末は絶対に小説は書きませんでした。子供のための時間だったんです。やり遂げたことを誇りに思います」。
バイアットさんは、20代だった1964年に処女作を発表し、これまで書き続けている。バイアットさんは「20代の時とタイプは違うけれど、今でも小説を書くことは本当に難しい。小説を書いてスランプに陥る時は、別の小説を書き始めたり、他人の作品を読んだりして克服します」と語った。
バイアットさんは最近、今回の受賞を機に朴景利氏の小説を読んでいる。バイアットさんは、「彼女は私に新しい世界を開いてくれ、楽しんでいる。6ヵ月後、メッセージを伝える」と明るく笑った。
朴景利文学賞授賞式は28日午後4時、江原道原州市(カンウォンド・ウォンジュシ)の土地文化館で行われる。バイアットさんに代わって、駐韓英国文化院のマーティン・フライア院長が出席する。
董正民 ditto@donga.com