北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長ら高官級代表団の3日間の訪韓日程のハイライトは、10日に行われる文在寅(ムン・ジェイン)大統領との昼食会合だ。国際社会の制裁と米国の対北朝鮮強硬基調の中、自身の血縁を韓国に送る「びっくりカード」を出した金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、文氏との会合でも破格の提案を出すという観測が流れている。
大統領府は、文氏が10日午前、金与正氏ら高官級代表団と面会した後、昼食を共にする予定だと明らかにした。昼食の場所は大統領府になる模様だ。北朝鮮の要人が大統領府で食事をするのは盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権での2007年11月の南北首相会談以来。北朝鮮側の代表は金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長だが、関心は昼食会合に出席する金与正氏に集まる。
特に、金与正氏は実兄の金正恩氏が最も信頼する側近なので、文氏に会う席で金正恩氏の親書や口頭メッセージを伝えるものと見える。南北関係の改善や韓半島の緊張緩和に向けた金正恩氏の立場が含まれる可能性が高い。金正恩氏は今年の「新年の辞」で、南北関係改善を「切迫した時代的要請」と述べた。
一部では、金与正氏を韓国に送ったことから、「平昌(ピョンチャン)後」の南北関係と韓半島情勢を揺るがし得る提案をする可能性があるという見方もある。米CNNは同日、複数の外交筋を引用して、「金与正氏が文氏に年内の訪朝を要請する可能性が高い」と報じた。また、「文氏の訪朝は光復節の8月15日に実現する可能性がある」と付け加えた。北朝鮮は毎年8月15日を祖国解放節として記念する。
丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官も9日、ラジオの番組に出演し、「金与正氏は平壌(ピョンヤン)版『ドアノブ』、唯一の『ドアノブ』だ。文大統領が新年記者会見で呼びかけた首脳会談について返答するだろう」と話した。文氏は先月10日、新年記者会見で、「条件が整い、成果が見通されるなら、いつでも首脳会談に応じる用意がある」と明らかにした。
丁氏は、「私たちが(首脳会談を)言い出したので、前向きに応えるだろう。平昌五輪を機に南北対話を始め、再び米朝対話に進もうとするだろう」と話した。
北朝鮮が、南北関係の回復を土台に米国との対話を打診する戦略により、南北首脳会談を提案する可能性があるということだ。
平昌五輪後、南北関係を修復して「韓半島運転席」に座ろうとしたが、米国がブレーキをかけたことで、文政権にとっても南北首脳会談が重要な突破口になり得るだろう。南北首脳会談の推進を前提に核活動凍結の約束を北朝鮮から引き出し、非核化交渉の契機が必要だという大義名分で米国を説得できるということだ。
ムン・ビョンギ記者 weappon@donga.com