マウンドに登るまでの全ての状況は柳賢振(リュ・ヒョンジン=ロサンゼルス・ドジャース)の味方ではなかった。当初登板が予告された9日は雨天で試合がキャンセルとなった。12日に先発登板する予定だったが、アレックス・ウッドが食中毒になり、登板が11日に繰り上げられ中8日での登板だった。一定のコンディションを保つには不利な不規則な日程だった。シーズン序盤の柳賢振が置かれた現実は厳しかった。みんなが好投しているドジャースの先発陣の中で、自分だけがシーズン初登板で5回を粘れなかっただけでなく、酷く不調な先発5番手だった。
柳賢振は同日、自ら先発ローテーションの一角を担うほどの投手であることを見せ付けなければならなかった。なおさら相手は最近ロサンゼルスでセンセーションを巻き起こしている大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)が7回を12奪三振、無失点に封じ込めたオークランド・アスレチックス。大谷との比較対象になるのもプレッシャーになる状況だった。
しかし柳賢振は最悪から始めた初登板の悪夢から抜け出す好投を見せ付けた。ホームでの初登板で「コリアンモンスター」の威信を示し、シーズン初勝利を飾った。5回2アウトまで、1回に四球一つだけを与えてノーヒット投球を続けた柳賢振は、スティーブン・ピスコッティに安打一つを許して6回を無失点に抑え、三振8つを奪った。この日、柳賢振は、全ての球が悉くストライクゾーンの隅々に突き刺さる完璧な制球を取り戻した。6回まで90球で十分だった。ストライクの割合は初登板の53%から66%に上がり、被安打率は.333から.176へと半減した。
MBCスポーツプラスのソン・ジェウ解説委員は、柳賢振の初勝利をけん引した最大の原因に、「カッター」を挙げた。ソン氏は、「オークランドの左打ちのパワーヒッターたちを相手に序盤から内角を攻めるカッターを確実に投げ込んだ。以前は、柳賢振と言えば『速球とチェンジアップ』だったが、意外とカッターで隅を攻略したのだから戸惑ったはずだ。また毎回、配球パターンを変えた。打者からすれば、どれを狙えば良いか紛らわしかっただろう。多様な配球のお陰で、同じ速球でもより威力的に見える効果があった。力ずくではなく、頭で相手打者を圧倒した」と分析した。
柳賢振は、この日毎回カッター(25球)を適当に混ぜてカウントを取り、フォーシーム・ファストボール(36球)、カーブ(15球)、チェンジアップ(13球)を使い分けながらストライクゾーンを攻略した。平均3つ以上の球種を混ぜて毎回打者と向き合あったが、特に制球に苦しむ球種がなかったため、「先にカウントを取って、攻撃的に投げる」好循環が可能だった。この日、全20打者を相手にした柳賢振が3ボールに追い込まれたのは4度だけだった。それさえも1回に四球を与えた以外はいずれも三振に仕留めた。
柳賢振は、試合終了後「初登板の結果が良くなかったので、今日はうまく投げたかった。自分が持っている全ての球種を全部使った」と語った。ソン氏は、「今シーズンは、もう少し多様な柳賢振の姿を見ることができそうだ」と話した。
打席でも自信が漲った。第一打席でフルカウントの末に四球を選んで歩いたほか、4回には今シーズン初安打も放った。6回の打席で交代され、100%出塁で任務を終えた。試合はドジャースが4-0で勝った。
任寶美 bom@donga.com