17世紀から、アメリカ新大陸に渡ってきた欧州の移民たちはマッコウクジラ漁に死活をかけた。高級香水の原料(アンバーグリス)をはじめ、1頭当たり1万リットルの油を得ることができた。「ゴールドラッシュ」の前、クジラは「海の黄金」だった。ハーマン・メルヴィル(1851年)の「白鯨」は、クジラを捕獲しようとして、ほとんどの乗組員が死亡し、94日間720キロを漂流したエセックス号の悲劇からモチーフを取ってきた。いつもコーヒーを手にして荒海に面している小説の中の一等航海士がスターバックである。
◆1971年、捕鯨船が出入りしていた港湾都市シアトル。大学同期の三人がコーヒーショップをオープンした。商号はスターバックに複数を意味する「s」を付けた「スターバックス」。16世紀のノルウェーの木版画の中の「セイレーン」から借用したロゴも披露した。美しい歌声で船員たちを誘惑するギリシャ神話のセイレーンのように、コーヒーの味で人々を虜にするという意味が込められている。
◆町中のコーヒーショップ、スターバックスが生まれ変わったのは、1987年にハワード・シュルツ(現会長)が買収してからだ。彼はランドマークだけを選んで、高い天井の全面ガラス店を出した。茶色の背景に人魚の裸の上半身を描いたロゴは、白と緑を対比させて、顔をクローズアップする方向に変えた。コーヒーの香りのために従業員は香水をつけることができない。壁にかける絵一つまでを本社が管理する。世界的チェーン店に飛躍した秘訣である。
◆「革新」の象徴であるスターバックスが、最近、米国では旧時代的「人種差別」で非難を受けている。客が黒人という理由だけで従業員の通報で警察に連行されたり、トイレの使用を拒否されたためだ。来月、米国内直営店舗8000ヵ所を半日休業して、全従業員(17万5000人)を対象に人種差別防止教育を行うと言われているが、ボイコットの動きはますます激しくなっている。韓国人客はすでに6年前、「切れ長の目」が描かれたカップを受け取る屈辱を経験したが、韓国内の「星の喫茶店」の疾走ぶりは星まで届く勢いである。1999年に上陸して、コーヒー価格世界トップ、人口当たりの売上トップ、単位面積当たりの店舗数トップなどの記録を立てているからだ。