「負けた、負けた」
PK練習で主将の奇誠庸(キ・ソンヨン=スウォンジー・シティ)に何度もゴールを許したGK金鎮鉉(キム・ジンヒョン=セレッソ大阪)は首を横に振った。9日、韓国代表チームの練習が終わった後、奇誠庸はグラウンドに残ってPKキック練習を繰り返した。奇誠庸のキックは、まるで「PKキックショー」のようだった。ゴールの墨に突き刺さる強力なシュートや、パネンカキックなど多様な蹴り方でネットを揺らした。
キックがパワーフルで高い精度を誇る奇誠庸は、ロシア・ワールドカップ(W杯)で代表チームのPKキッカーを任される可能性が高い。この日、金鎮鉉と交互にゴールを守ったGK金承奎(ヴィッセル神戸)は、「誠庸のキックを沢山見てきたので、シュートのコースを予測して跳んてみた。止められないほど鋭かった」と話した。
歴代のW杯で韓国は31ゴールを決めたがPKでの得点はなかった。2002年韓日W杯で李乙容(イ・ウルヨン=米国戦)と安貞桓(アン・ジョンファン=イタリア戦)がPKを外した。安貞桓MBC解説委員は、「PKを外したときは『海外に移住しなければならないのか』とも思った。生まれた一番つらい瞬間だった」と振り返った。
ロシアW杯ではPKで勝負が分かれる可能性が高い。重圧に苦しみDF陣が焦って反則をすることが多い上、W杯初のビデオ判定が導入されるからだ。韓国代表チームの関係者は、「守備陣の巧妙な反則もすべてがカメラと捉えられるので注意しなければならない」と話した。
PKは一般的にキッカーがGKより有利だ。キッカーとゴールとの距離は11メートル。キッカーが時速90~100キロ(成人男子選手の平均シュート速度)で蹴ると、ゴールラインを通過するまで0.5秒がかかるのに対し、GKの反応速度は0.6秒だ。
数値上ではGKが防ぐのは不可能だが、米国のフォックススポーツによると、統計的にキッカーがPKを成功させる確率は80%だという。キッカーとGKの心理戦次第で結果は変わってくる。ボールの方向を予測して跳んでしまったGKの動きに慌てたキッカーがゴールを外すことも起きる。英国エクセター大学の研究チームは、「キッカーはGKの動きを無視してボールをどこに送るべきかだけに集中しなければならない。キッカーの目の動きを追跡した結果、GKを長く見ているほど不安感が高まり、キックの精度が落ちた」と分析した。
英国のスカイスポーツによると、リバプール・ジョン・ムーア大学の研究グループは、先端のカメラを使った手法でPKを成功させる条件を提示した。キッカーは5、6歩の助走に続いて身体の重心を基準に、20~30度の角度でシュートと打つのが理想的だという。ボールの速度は時速105キロ以上が良い。この場合、ボールはクロスバーとゴールポストからそれぞれ50センチ内側に向かうため、GKは手が届き難い。GKがPKを防ぐための秘策はないのだろうか。ドイツ紙ディベルトは、「キッカーの足の向きはゴールの方向だ。蹴る直前に地面でキックを支える軸足のつま先は80%ほどがボールが飛ぶ方向を向いている」と報じた。
一方、韓国代表チームは11日の午後10時30分、オーストリアのグレーディヒでセネガルと非公開の親善試合を行う。W杯開幕前の行う最後のテストマッチだ。代表チームは、セネガル戦でベスト11とセットプレーを確かめるものと見られる。W杯グループリーグのH組に入っているセネガルは、国際サッカー連盟(FIFA)ランキング27位(韓国は57位)で個人技と攻撃のスピードが速いチームだ。申台龍(シン・テヨン)監督がW杯代表チームを招集して以来、W杯出場国と親善試合を行うのは初めて。
鄭允喆 trigger@donga.com