「経済検察」といわる公正取引委員会は、二つの顔を持っている。一つは、巨大企業に対抗して、中小企業、下請け業者と消費者保護のために戦う正義の機関というイメージだ。もう一つは、国家権力を背景に企業に横暴な振る舞いをする悪役のイメージだ。検察による公正取引委員会の再就職を巡る捜査結果が明らかになったことを見れば、悪役を超えてギャングともいえる。
◆「年俸2億6000万ウォン、車両提供、自己運転補助費、毎月400万ウォンを使える法人カード、2016年当時、公正取引委員長だった鄭在燦(チョン・ジェチャン)氏など、公取委の幹部らがとある大企業を圧迫して、1年後に顧問として就職させた公正取引委員会退職幹部の就職条件だ。世の中にどのような機関が給料はもとより、法人カードの限度額まで決めて退職者の再就職をさせるのか。再就職先の企業を見ると、支配構造、買収合併から広告まで、あれこれ後ろめたいことの多い大企業と消費者の問題が後を絶たない流通企業である。企業の弱い環を誰よりもよく知っている公正取引委員会の「専門性」が現れている。
◆公取委だけだろうか。国土交通部、産業通商資源部、金融委員会、金融監督院など、力のある省庁と機関は、普段から企業を牛耳ることができ、そうなればなるほど、企業はその省庁出身の公務員を採用したいと考えている。現職公務員に声でもかけられる過去の同僚が必要だからだ。企業を苦しめれば苦しめるほど再就職のポストが増える、それこそ悪質な食物連鎖構造だ。公取委は、他の経済省庁のように傘下の公企業がおらず、退職後に天下りできるところもあまりない。公取委がなぜあれほど退職者の再就職に必死なのかがわかる。
◆公取委の幹部らが検察に呼び出されて処罰を受けることが、今回が初めてではない。しかし、カラスが飛び立つとナスが落ちるともいえるように、新政府が発足して専属告発権を巡って検察と公取委が対立するたびに起きたのも事実である。昨日、金尙祚(キム・サンジョ)委員長が再発防止のための対策を発表する席で、「公正取引委員会は、市場経済の競争と公正原理を具現すべき機関であるにも関わらず、これまで法執行権限を独占してきた」、と専属告発権と今回の事態が無縁ではないことを示唆した。しかし、専属告発権をめぐる検察との睨めっこから離れて、不合理な再就職を巡る実体への徹底的な反省と再発防止から考えるべきである。