国際刑事警察機構インターポールのトップである中国人の孟宏偉総裁が、中国到着後に姿を消した。インターポールの本部はフランスのリヨンにある。夫と一緒にフランスに居住する孟総裁の妻がフランスの警察当局に通報し、孟氏の行方不明のニュースが伝えられた。孟氏の妻は、「中国で夫の命に触れる脅迫電話を受けたことがある」とし、「夫は先月20日にフランスを離れて、ストックホルムを経て、北京に到着後は行方が分からない」と明らかにした。
◆フランスと香港の複数のメディアは、匿名の情報筋の話として「孟総裁は空港に降りるとすぐにどこかに連れて行かれた」とし、「腐敗疑惑で中国当局の取調べを受けている」と報じた。これに先立って、中国の人気女優范冰冰はなんと4ヶ月以上もメディアの追跡から消えて、范氏の行方不明を巡って死亡説や監禁説、亡命説など数々の噂が飛び交った。范氏は今月3日、ようやく自身のソーシャルメディア(SNS)に「脱税を謝罪する」という文を掲載し、腐敗疑惑で取り調べを受けたことを示唆した。
◆中国の財閥明天グループの肖建華会長は昨年1月、香港に行って消えてから未だに生死が不明だ。腐敗に巻き込まれたとみられるが、中国当局は、肖氏がどのような容疑でどこで取り調べを受けているかさえ公開していない。中国天安門事件の真相を知らせるために努力してきたノーベル平和賞受賞者劉暁波の妻、劉霞氏は昨年7月に夫が亡くなった後、中国当局によって今年7月にドイツへの出国が許可されるまで家宅軟禁状態にいた。
◆監視と無断連行・軟禁は独裁国家の典型的な特徴である。英国のマグナカルタ以来、民主主義は人身の自由を要求することから始まる。文明社会で誰かを逮捕したときは、その事実を家族や友人に知らせて弁護人の助力を受ける権利を保障するのは最小限の人権だ。突然の失踪は、本人だけでなく、家族や親戚に死という最後の状況を想定させる恐怖を呼び起こし、胸が焦がれる。他の誰でもなく、インターポールのトップとその家族までもが、そのような恐れに苦しまなければならない国が、単一指導体制を強化する習近平の中国だ。
ソン・ピョンイン論説委員 pisong@donga.com