京都市北部の静かな住宅街で断然目立つ懐かしい韓国瓦塀に囲まれた3階建ての建物。韓国の文化財だけを展示する海外では唯一の博物館である高麗美術館だ。中に入ると、どこか見慣れた5重石塔が歓迎した。高麗美術館のチョン・ヒドゥ常任理事(59)は、「統一新羅後期から高麗前期様式であるこの塔は、1910年代に日本に収奪されたものを取り戻したものだ」と説明した。塔の基壇を繰り返してなでる手から深い愛情が感じられる。
「この塔は、神戸の金持ちの自宅の前庭に崩れた状態で放置されていました。父が10年かけて持主を説得したあげく取り戻すことができました。うちの美術館のコレクションは、それぞれこのような事情を一つずつ持っています」
高麗美術館はチョン氏の父親である在日韓国人のチョン・ジョムン氏(1918~1989)が私財を投じて1988年10月25日に設立しもので、陶磁器や書籍、絵画など韓国文化財1700点余りを収蔵している。今年で開館30周年を迎えた。先月7日に訪れた高麗美術館では、30周年記念「チョン・ジョムンと高麗美術館」展示が開催されていた。
12月まで続く記念展では、チョン氏が特別大事にしていたコレクション80点余りを披露する。中でも最愛の作品は、帆船と魚が描かれた素朴な鉄砂壺。生前に「このような帆船に乗ってでも故郷の地を踏んでみたい」という言葉を頻繁に口にしたという。高麗美術館がこの壺に描かれた帆船模様をロゴに使っていることもこのためだ。
根深い差別を経験して育ったチョン氏は、文化財を通じた韓日交流に癒しの道があると信じていた。32回にわたって、日本人1万人と一緒に、日本の歴史に残っている韓国文化の痕跡を探す踏査を行った。韓国文化を日本人に紹介する博物館を建てることは、チョン氏の生涯の目標だった。日本の文豪、司馬遼太郎(1923~1996)がその情熱に感服して、「期必朝鮮美術館」という筆文字を書いてプレゼントした。
「澗松(カンソン)美術館が、うちのコレクションでソウルで特別展を開きたいと提案したことがあるが、苦心の末に断りました。うちの美術館は日本人に韓国文化を知ってもらいたいという趣旨で設立したものだからです。実際うちの観覧客の4分の3は韓国にはゆかりのない純粋な日本人です」(チョン理事)
そのため、韓日文化交流の歴史を示す朝鮮通信使行列図は、特別な意味を持ったコレクションだ。昨年10月、所蔵している行列図2点がユネスコ世界記録遺産に登録されるめでたいこともあった。チョン理事は、「数百年間戦争を行ったが、フランスにはドイツ文化の展示館があり、ドイツにはフランスの展示館があるように、韓日関係もお互いの文化を理解しながら共に発展することを願う」と話した。
京都=イ・ジウン記者 easy@donga.com