タンザニアの40代の企業家の誘拐事件が連日、アフリカ現地の新聞1面を飾っている。
この企業家が何者かに誘拐され、1週間が経過したが行方は五里霧中だ。警察はまだ何の手がかりもつかめていない。誘拐が自分たちの犯行だと主張する組織もまだいない。状況がこうなので、誘拐被害者の家族は、巨額の懸賞金をかけて情報の提供を待っている。
今回の事件で、アフリカのメディアが特に関心を示すのは、誘拐された人が「アフリカ最年少億万長者」と呼ばれるモハメド・デュージさん(43)だからだ。
タンザニア最高の富裕者とされるデュージさんは、貿易、製造、保険、不動産、運送など様々な事業を展開するMeTLグループの会長。財産は約15億ドル(約1兆7千億ウォン)にのぼるという。米経済誌「フォーブス」は2015年、「アフリカで最も影響力のある人物」にデュージさんを選んだ。
15日、オールアフリカなどアフリカ現地メディアによると、デュージさんの家族は、「(デュージさん)行方を追跡する手がかりや誘拐事件の背後に関する情報を提供すれば、1億シリング(約5億ウォン)を与える」と懸賞金をかけた。デュージさんの家族の代理人は同日、記者会見を行い、「情報提供者の秘密の維持と身辺警護もする」と述べた。
タンザニア警察の捜査はなかなか成果を出せていない。タンザニア政府は、情報機関まで動員して誘拐事件の関連情報を探しているが、まだこれといった手がかりは得られていない。分かっていることは、犯人が「英語を使う白人」という程度だ。MeTLグループの年間の売り上げはタンザニアの国内総生産(GDP)の約3%と推算される。タンザニア政府でも今回の誘拐事件は急いで解決しなければならない問題だ。
ホテルの警備員ら目撃者によると、誘拐当時の様子は映画のワンシーンのようだ。誘拐に20秒程しかかかっておらず、徹底して計画された犯行だった。デュージさんは11日未明、タンザニアの首都ダルエスサラームのあるホテルの駐車場で誘拐された。毎日、自分で運転してスポーツジムに通うデュージは、同日も運動を終えて一人でスポーツジムから出た。ある目撃者は、「2台の車がホテルの駐車場と外に待機していた。ヘッドライトを点滅させて信号をやりとりするようにみえた」と話した。銃を持ったある男は、デュージさんを捕まえて車に強引に乗せ、空に向けて発砲してホテルを出た。
デュージさんは「ノブレス・オブリージュ」(上流層の道徳的義務)を実践し、社会的にも多くの人気を得てきた。2005~15年、タンザニア国会議員としても活動したデュージさんは、05年12月の総選挙で得票率が90%を超えた。自身の名前を取った社会福祉財団を設立し、タンザニアの貧民のための教育と福祉にも力を注いだ。昨年には財産の半分を社会に寄付すると発言し、話題を集めた。
徐東一 dong@donga.com