「金を儲けて台湾の民進党を支援するのではないか」
中国大陸で活動する台湾の実業家の中には、面と向かってこのように言われることがあると、中国のある専門家は伝えた。2016年1月、独立指向の民主進歩党(民進党)の蔡英文総統が当選して以降の中国の民進党圧迫のムードをうかがわせる。
先月24日の台湾の統一地方選挙で民進党が国民党に惨敗した原因をめぐって、中国の経済的圧力も主な要因の一つだったという分析が出ている。
今回の選挙で、22県・市の首長のうち民進党所属は13人から6人に減ったが、野党国民党所属の当選者は6人から15人に増えた。民進党は20年間守ってきた票田である第2の都市、高雄の市長ポストも国民党候補の韓国瑜氏に奪われた。
中国は、蔡総統が政権を獲得した後、台湾行きの観光客クォーターを縮小したほか、一部の農水産物の輸出制限措置を下した。台湾から供給されていた部品を大陸内で自ら調達するいわゆる「紅色供給網」稼動の強化も、中小企業の部品産業が主力である台湾経済に大きなダメージを与えた。
KOTRAのパク・ハンジン中国地域本部長は30日、東亜(トンア)日報の電話取材に対して、「蔡総統の執権後、中国は台湾へ行く団体観光客の規模を40%近く減らすなど制裁を加えた。観光分野で特にダメージが大きかった」と伝えた。
蔡総統の就任当時、22ヵ国だった台湾の修交国が今年17ヵ国に減るほど、外交的孤立作戦も強化された。今回の選挙で、世論が民進党に背を向けた主な要因は、経済の悪化だ。昨年、総輸出額のうち41.1%(香港含む)を占めるほど台湾の中国大陸に対する経済依存度が圧倒的な状況で、中国の民進党への圧力が続くと、台湾の有権者が「大義名分よりも実利」、「両岸問題よりも安定」を選択したと分析される。
中国寄りの国民党の馬英九前総統の10年間の執権後、台湾の有権者が民進党の蔡総統を選択した時は、ある程度の両岸問題は予想された。蔡政権は、東南アジアとの交流拡大など「新南方政策」で突破しようとした。しかし、今回の選挙は、「中国に背を向けることは経済にはあまりにも重荷」であることを示したという見方が多い。
統一地方選挙で、蔡総統の基盤支持層である若者が離れたことがうかがえる。韓国外国語大学中国政治経済学科のカン・ジュンヨン教授は、「中国で就職を希望する若者が69%にのぼる」とし、「台湾内の若者の失業問題が深刻な状況で、民進党が中国との軋轢を生み続けるため、若者の支持層が背を向けた」と説明した。今年の第3四半期(7~9月)の台湾の若者世代の失業率は12.29%で、全体失業率(3.76%)を大きく上回った。
中国大陸で経済活動をする台湾人は約150万人と推算される。この中には、電気・電子部品工場の従事者も多い。ペーパーカンパニーを立てたり、統計に捉えられない方法で経済活動をする人も少なくない。中国に進出した実業家は、国民党に投票するために選挙の時は飛行機に乗って台湾に行き、投票をして戻ってくるほど積極的だ。
中国国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は先月28日、記者会見を行い、「中国と台湾の都市交流が拡大するだろう」とし、「中国の団体観光客が高雄に向かっている」と述べた。野党が勝利した地域を中心に交流を拡大するなど民進党に圧力をかけながら、中国寄りの地方自治体に融和的な措置を取る可能性を示唆した。
李雪 snow@donga.com