ミュージカル音楽の巨匠シルベスター・ルベイ(73)にとって、1988年は忘れられない年となった。ドイツの作詞家兼作家であり、作業のパートナーであるミヒャエル・クンツェ(74)から、ミュージカル「エリザベート」のコラボレーションの提案を受けたのだ。ハンガリー出身のルベイは、当時ポップソングと映画音楽で成功的なキャリアを築いていた。スティーブン・スピルバーグ監督と映画音楽の制作を一緒に手がけ、ポップソング(シルバーコンベンションの「Fly Robin Fly」)で1976年にグラミーアワードも受賞した。ルベイは、「キャリアの転機となった『エリザベート』の後、ミュージカル音楽創作者としての人生が始まった」と語った。
ソウル龍山区(ヨンサング)にあるブルースクエアで13日、韓国コンテンツ振興院が主催したセミナー「コンテンツインサイト」に出席した彼に会った。ルベイは、「(作曲するとき)観客の興味を最優先に考慮し、成功に拘らないことが重要だ」と語った。
彼は曲を書く前に、登場人物に感情移入するために努める。だから劇の順序に従わず、その日その日の気分に応じてランダムで曲を作る。彼は、「皇后エリザベートの観点から、宮殿に閉じ込められた気持ちを想像する途中に『私は私だけのもの』ナンバーのインスピレーションが浮かんだ」と語った。実在していたオーストリアの皇后エリザベートの生涯を描いた「エリザベート」(1992年)は、ずば抜けた容姿を持ったが、皇室生活に息苦しさを感じて、死の誘惑を感じ続ける物語を盛り込んだ作品。自由を渇望しながらエリザベートが歌う「私は…」は、女性から大きく愛される曲だ。特に既婚女性たちからは爆発的な歓声が送られている。彼は、「結婚生活が不幸だと感じた女性たちが、皇后と自分を同一視しながら、慰めを受けているような気がする」と笑った。
天才的な才能に自由奔放な魂を持ったが、恵まれない家庭環境と後援する権力者の傲慢さに押されたモーツァルトを描いた「モーツァルト!」(1999年)は、「エリザベート」の成功に少なからぬ負担を感じながら作った作品だ。彼は曲を書くために、モーツァルトの墓とザルツブルクの生家などを訪れる。その結果、クラシック音楽からロック、ジャズを行き来する叙情的ですさまじいナンバーがコントラストを成して、モーツァルトの複雑な心を絶妙に描写し、観客を魅了した。ルベイは、「足で走るときに良いインスピレーションが浮かぶことが多い」とし、「現場で感じた雰囲気を、曲によく反映するために努める」と語った。
強烈なナンバーは彼のトレードマーク。「レベッカ」(2006年)で、狂気じみたダンバース夫人が、死んだレベッカに執着し、絶叫するように歌う「レベッカ」のナンバーは圧巻という評価だ。
ルベイは、「韓国の俳優たちは、歌の腕前がとびきりうまい」と語った。彼は「エリザベート」でエリザベート役を演じた玉珠鉉(オク・ジュヒョン)とトッド(死)役をこなした朴孝信(パク・ヒョシン)など、俳優たちの名前をもれなく覚えていた。その前日は、ブルースクエアで公演中の「エリザベート」の金俊秀(キム・ジュンス)に会って、「感情やドラマ共にアップグレードされたトッドに出会った。私の音楽を完成させてくれるキャラクターをよく表現してもらってありがとう」とあいさつした。
「韓国観客の反応はすごいよ。その熱いエネルギーに私もいいオーラをいっぱい受けるような気がします。韓国、日本などのアジア観客のための作品を作り、いつかはオペラも書きたいと思います」
申圭鎭 newjin@donga.com