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全欧州を襲った黒死病、ルネサンスを起こした原動力

全欧州を襲った黒死病、ルネサンスを起こした原動力

Posted January. 05, 2019 07:35,   

Updated January. 05, 2019 07:35

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ルネサンスを起こした原動力はほかでもない「病」だった。14世紀中盤、欧州の人口の約3分の1を死に至らしめた黒死病がその主人公だ。ルネサンス以前の中世の欧州は、約1千年間、神の支配の下に置かれた。医学も、薬草(ハーブ)などを使って内科治療をするカトリック司祭が医師よりも信頼された時代だ。

黒死病が流行すると人々は司祭の助言どおり神に祈ったが、効果はなかった。一般人の死亡率が約30%だったが、司祭の死亡率は42~45%にのぼった。教会が治療どころか司祭が先に死んでいく現実を目の当たりにし、大衆の教会と神への信頼が落ち始めた。

 

神権が失墜する一方、王権は強化された。黒死病の大流行を終わらせたのは、祈りでなく国家が始めた衛生と検疫だった。15世紀に入って欧州各国は防疫システムと旅行証明書を発行した。現在まで全世界のすべての空港と港湾で行われる検疫は、黒死病の流行が端緒となった。

このように医学の発展で変化した世界史の決定的なシーンが、生き生きと盛り込まれた。檀国(タングク)大学医学部教授で、ウィットのある大衆講演で知られる著者の経験によって、医学を専攻しなかった一般の人も容易に読めるのが最大の長所だ。

著者は、実験室の天才的な科学者の努力より、異なる文明の出会いや社会の急激な変動が医学の発展の最大の原動力だと強調する。古代ギリシャは、ペロポネソス戦争をはじめ絶え間ない葛藤と衝突で人と社会、知識まで交差することができた。そのおかげで、ヒポクラテスのように西洋医学の基礎を作った人物を輩出することができた。

 

最近、人工知能(AI)など先端医療技術が発展し、医師という職業が消えると見通されている。

しかし、治療は単なる薬品の投与や手術にとどまらない。プラシーボ効果のように医師と患者の共感と信頼を土台にした治癒は、AIが代わることができない医療の核心だと強調する。

「医学の歴史を知らない民族に健康はない」という著者の言葉のように、健康な社会を作るために努力してきた医学者の熾烈な奮闘が興味深く繰り広げられる。


柳原模 onemore@donga.com