貨幣の図案は、その国の歴史や文化、建国理念などを盛り込んでいる。幸運のシンボルとされる米国の2ドル紙幣には、米国の独立精神を象徴する名画が刻まれている。米国ではレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」よりも知られており、より多く複製されて流通される絵。ほかならぬジョン・トランブルの「独立宣言」がその主人公だ。
トランブルは「革命の画家」と呼ばれるほど、米独立戦争をテーマにした歴史画を多く描いた。植民地州知事の息子として生まれた彼は、兵士として独立戦争に参加し、ジョージ・ワシントンの個人補佐官としても活動した。横が5メートルを超えるこの大型絵は、1776年、英国の植民地だった米国13州の代表が集まって、独立宣言の素案を議会に提出するシーンを描写している。
トランブルは、56人の宣言書署名者のうち42人を描いたが、署名を拒否したジョン・ディキンソンを含む議論の参加者も描きいれた。画面の真ん中で宣言書を提出している最も背の高い男は、米国の第3代大統領を務めたトーマス・ジェファーソンだ。宣言書素案のほとんどを書いた彼は、米国建国の父と呼ばれ、2ドル紙幣の前にも登場する。彼の右側には、一緒に素案を作成したベンジャミン・フランクリンが、左側には2代目大統領を務めたジョン・アダムズが手を腰に当てて立っている。
米国の独立宣言書は、「すべての人は平等」に生まれ、「生命と自由と幸福を追求する権利」があり、「いかなる形の政府でも、この目的を破壊するときは、いつでも政府を変革又は廃止して新しい政府を組織するのが人民の権利」であることを最初に明示している。さらにジョージ3世治下の不満事例27件を列挙後、自主独立国としての米国の権利を宣言している。
だからといって宣言がすぐに独立を意味するわけではなかった。自由はただで来ないように、宣言後、8年間の闘争の末、米国は初めて完全な独立を勝ち取ることができた。独立宣言のこの歴史的シーンは、貨幣に刻まれて今日も自由と独立の崇高な精神を日常的に悟らせている。