就任直後から「韓半島の運転席」に座ると公言してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、ハノイでの米朝首脳会談の決裂後、本格化した米朝首脳間の激しい駆け引きにどうすることもできない状況に陥っている。それこそ北朝鮮核問題で「サンドイッチ」の状態だ。米ワシントンに飛んで提案した「グッド・イナフ・ディール」(米朝が受け入れる十分に良い取引)は、トランプ米大統領が面前で断り、さらに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長からは「仲裁者、促進者ではなく当事者になれ」と南北経済協力の推進を催促されている。大統領府内外でも、「非核化対話を推進して以来、最も厳しい状況」と診断されている。
金正恩氏は、韓米首脳会談が開かれた12日、最高人民会議での施政演説で、文大統領に対して「おせっかいな仲裁者、促進者の振る舞いではなく、民族の利益を擁護する当事者になるべきだ」とし、「実践の行動で誠意を見せる勇断を下さなければならない」と主張した。米朝仲裁よりも昨年9月に平壌(ピョンヤン)で合意した平壌共同宣言の後続措置と本格的な南北経済協力に乗り出すよう求めたのだ。しかし、トランプ氏は平壌共同宣言に含まれた開城(ケソン)工業団地、金剛山(クムガンサン)観光の再開について、韓米首脳会談で「適正な時期ではない」と一蹴した。さらに、「北朝鮮に対する制裁は今適正な水準であり、そのまま維持する」と述べ、「現時点では(北朝鮮が)核兵器を放棄するビッグディールについて話している」と強調した。初期水準の南北経済協力に対する米国の支援をテコに北朝鮮を説得しよう考えていた文大統領の構想を断ったのだ。
ワシントンと平壌が文大統領に相次いで不満を表出したことに対して、大統領府は公式の反応を控えている。トランプ氏も同意したので4回目の南北首脳会談を通じて突破口を開く計画だが、文大統領には金正恩氏を対話のテーブルに引き出す適当なカードがない。南北首脳会談まで収穫なく終わる場合、ハノイとワシントンに続き「3回連続ノーディール」の可能性も排除できない。
ただ米朝首脳いずれも対話の可能性を開いているということに、文大統領は一縷の望みをかけている。金正恩氏は、「制裁解除のために米国との首脳会談に執着する必要はない」としながらも、「3回目の米朝首脳会談を一度してみる用意はある」と明らかにした。トランプ氏もツイッターで、「3回目の会談が望ましいということに同意する」と前向きに応じた。大統領府関係者は、「近く北朝鮮に特別使節団を派遣することを北朝鮮側と協議する予定だ」と話した。文大統領は15日、首席・補佐官会議で、韓米首脳会談に対する評価と4回目の南北首脳会談に対する立場を明らかにする予定だ。
韓相準 alwaysj@donga.com