トランプ米大統領のツイッターと不可分の関係にある人物が、まさにホワイトハウスでソーシャルメディア広報を担うダン・スカビーノ氏(43)だ。ソーシャルメディア広報責任者は、2017年1月、トランプ氏の就任後に新設されたポストだ。最高権力者の言葉は力だ。そのためか、大統領のメッセージの窓口であるスカビーノ氏は、単に大統領のソーシャルメディアを管理するだけでなく、米政権の政策決定に深く関与する「実力者の中の実力者」とされる。
●キャディーからホワイトハウスの核心参謀に
スカビーノ氏は1976年、米ニューヨークでイタリア移民の子として生まれた。16歳だった1992年にゴルフ場でキャディーのアルバイトをし、トランプ氏に初めて会った。ニューヨーク州立大学プラッツバーグ校でコミュニケーションを専攻し、コカコーラなどで働き、2004年からトランプ・ナショナル・ゴルフクラブのマネージャーを務めた。
2016年の大統領選で、トランプ氏のソーシャルメディア戦略を担当し、その功労が認められ、新設ポストであるホワイトハウスのソーシャルメディア広報責任者になった。米政治専門サイト「ポリティコ」は、トランプ氏がスカビーノ氏にイラン制裁、中東派兵、移民など核心政策を諮問するほど信頼していると伝えた。
昨年12月、トランプ氏がシリアからの米兵撤収を発表すると、数人の議員がホワイトハウスを訪れ、大統領に「国家安保の深刻な空白になる」と指摘した。トランプ氏はスカビーノ氏に入るように言った。この席で、スカビーノ氏の真価が発揮された。彼はソーシャルメディアに登場した米兵撤収に対する肯定的な評価を見せ、反対する議員を大統領の代わりに説得したという。ポリティコは、「スカビーノ氏が『地政学的戦略』ではなく、『ツイッターの反応』を通じて国家政策を決めるようにさせた瞬間」と評価した。トランプ氏も私的な席で、「しばしばスカビーノの意見を聴く。彼は常識もあるセンスが良い」と話したという。
このような絶対的な信任を受け、スカビーノ氏は1日6回以上、大統領執務室を出入りするという。別の参謀が大統領の気持ちを把握するためにスカビーノ氏に聞くことも多いと、米紙ニューヨーク・タイムズは伝えた。スカビーノ氏は、トランプ政権発足から2年5ヵ月が経った今でもホワイトハウスに残る数少ない「元年メンバー」だ。年俸も17万9千ドル(約2億1300万ウォン)で、ホワイトハウスの職員約120人の中で最高水準だ。
● 「ゲーム・オブ・スローンズ」ツイートもスカビーノ作品
スカビーノ氏は、大統領が行く所ならどこへでも同行し、大統領アカウントでツイートする。大統領の言葉をそのまま伝える時もあり、文を作成して大統領が気に入るものを選ぶよう提示する時もある。話題を呼んだトランプ氏のツイートのうち、多くがスカビーノ氏の作品だと、ポリティコは報じた。代表的な例が、最近放映が終了した米ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のセリフを借用したパロディのツイートだ。トランプ氏は昨年11月、イラン制裁を控えて「制裁が近づいている(Sanctions are Coming)」、今年4月、ロバート・モラー特別検察官のロシア疑惑(ロシアが米大統領選に介入したという疑惑)捜査結果の報告書公開直後、「共謀も司法妨害もない。ゲームは終わった(No collusion. No obstruction. Game Over)」とツイッターに投稿した。このほか、大統領の日程に関するツイートもほとんどスカビーノ氏が作成すると、同紙は伝えた。
それに対する評価は錯綜する。一部ではスカビーノ氏がソーシャル・メディアを通じて大統領と支持者をうまく結びつけていると肯定的に評価する。一方、「シリアからの米兵撤収」のエピソードで見るように、大統領が好きな情報だけ提供し、最高権力者の目と耳を塞いでいるという批判もある。
このような論議にもかかわらず、スカビーノ氏が来年の大統領選でもトランプ陣営の核心人物として活動する可能性が高いと、ポリティコは診断した。何より別の参謀とは違って、ホワイトハウス内の激しい権力争いに巻き込まれず、メディアとも距離を置く「隠遁」の振る舞いが、大統領の信頼を高めているということだ。
イ・ユンテ記者 oldsport@donga.com